ライブは誰のためのものか。揺らぐ「観客の在り方」
もちろん、日本国内でもアーティストによってスタンスは大きく異なる。静寂の中で音響を届けたい現場もあれば、観客を煽り倒して声を出させることでライブを完成させる現場もある。
しかし、ポップミュージックの頂点に立つアーティストのライブでは、多様な“理想”を持つファンが混ざり合う。個人的な幸福感と、共同体としての幸福感。井口理が「それ以上に歌え」と明確に意思表示したことで、この相反する願いの折り合いはますます難しくなっている。
井口の言葉は、観客を受け身の消費者から、表現の一部を担う能動的な参加者へと引き上げるロック本来のダイナミズムを提示した。
しかし、その熱狂の隣には、一筋の歌声を静かに守りたいと願う誰かが確かに存在する。ライブにおける「マナー」とは、アーティストの意向に従うことなのか、それとも周囲の観客への配慮なのか。
転換期を迎えた日本のライブ文化において、私たちは今、改めて「音」との向き合い方を問われている。
