
日焼けや肌荒れのケアに使われる「アロエベラ」。
あの身近な植物に、アルツハイマー病の進行を抑える可能性があるとしたらどうでしょうか。
モロッコのハッサン2世カサブランカ大学(Hassan II University of Casablanca)の研究チームは、アロエベラの葉に含まれる成分を解析し、認知症治療薬の候補になり得る化合物を特定しました。
研究の詳細は2025年4月23日付で科学雑誌『Current Pharmaceutical Analysis』に掲載されています。
目次
- ターゲットは「記憶の分解酵素」
- 認知症の新薬になりうるのか
ターゲットは「記憶の分解酵素」
アルツハイマー病では、神経伝達物質「アセチルコリン」が減少することが知られています。
アセチルコリンは学習や記憶に深く関わる物質であり、その不足が認知機能低下の一因と考えられています。
そこで標的となるのが、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とブチリルコリンエステラーゼ(BChE)です。
既存の治療薬の多くも、これらの酵素を阻害することでアセチルコリンの量を保とうとします。
研究チームは、アロエベラの葉から知られている11種類の化合物を対象に、これら2つの酵素とどの程度強く結合するかをシミュレーションしました。
酵素に強く結合できれば、アセチルコリンの分解を抑えられる可能性があるからです。
その結果、特に高い結合親和性を示したのが「ベータシトステロール(beta-sitosterol)」でした。
AChEおよびBChEの両方に対して比較的強い結合エネルギーを示し、二重阻害の候補として浮上しました。
認知症の新薬になりうるのか
酵素に結合するだけでは薬にはなりません。
体内で吸収され、適切に分布し、分解され、毒性が低いことも重要です。
そこでチームは、ADMET解析と呼ばれる薬物動態予測を実施。
これは「吸収」「代謝」「排泄」「毒性」などをコンピューター上で推定する方法です。
その結果、ベータシトステロールは全体として良好な予測値を示しました。
また、コハク酸も候補として挙げられています。
さらなるシミュレーションでは、ベータシトステロールが酵素の活性部位に比較的安定して結合し続ける様子が示されました。
これは一時的な結合ではなく、ある程度安定した相互作用が維持される可能性を示唆する結果です。
チームは、これらの包括的な解析結果から、ベータシトステロールをはじめとする化合物が安全かつ有効な治療薬候補となり得ると結論づけています。
希望はあるが、まだ第一歩
ただし忘れてはならないのは、本研究はあくまでコンピューター上の予測であるという点です。実際に細胞や動物、さらにはヒトで効果や安全性が確認されたわけではありません。
それでも、アルツハイマー病は世界で5500万人以上が罹患し、今後さらに増加が見込まれる疾患です。
多面的な原因が関与すると考えられており、複数の治療アプローチが必要とされています。
アロエベラという身近な植物の中に、新たな治療のヒントが潜んでいる可能性があります。
自然界が差し出す小さな分子が、未来の認知症治療へとつながるかどうか。今回の研究は、その第一歩を示したと言えるでしょう。
参考文献
Aloe Vera Compound May Help Fight Alzheimer’s Disease, Simulations Suggest
https://www.sciencealert.com/aloe-vera-compound-may-help-fight-alzheimers-disease-simulations-suggest
元論文
In silico exploration of Aloe vera leaf compounds as dual AChE and BChE inhibitors for Alzheimer’s disease therapy
https://doi.org/10.1016/j.cpan.2025.03.005
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

