私たちが日常的にスマホで読み取っているQRコード。その常識をくつがえす、とんでもなく小さいQRコードが誕生しました。面積はわずか1.977平方マイクロメートル。多くの細菌よりも小さく、肉眼どころか光学顕微鏡でも見えません。読み取りに必要なのは、なんと電子顕微鏡です。
この世界最小QRコードが、ギネス世界記録に認定されました。
電子顕微鏡でしか見えない、驚異のサイズ
記録を打ち立てたのは、オーストリアのウィーン工科大学(TU Wien)の研究チームと、データ保存技術企業のCerabyte(セラバイト)社です。
作られたQRコードの面積は、1.977平方マイクロメートル。これは、多くの細菌よりも小さなサイズです。個々の画素(ピクセル)はわずか49ナノメートルで、可視光の波長の約10分の1。光学顕微鏡ではまったく識別できません。
研究チームは「集束イオンビーム」という技術を使い、窒化(ちっか)クロムの薄膜を極めて精密に加工しました。窒化クロムは、金属のクロムと窒素(ちっそ)からできた非常に硬い素材で、摩耗や熱、サビに強いのが特徴です。
こうした高い耐久性を持つ材料だからこそ、微細な構造でも安定して情報を保つことができます。完成したQRコードは、ウィーン大学の走査型電子顕微鏡によって独立に検証され、実際に読み取れることも確認されました。
ギネス世界記録に正式認定されたのは、2025年12月3日。なお今回のQRコードは、従来記録のわずか37%のサイズだといいます。
小さいだけじゃない。“超安定”が本当のすごさ
「マイクロサイズの構造自体は、今や珍しくありません」と語るのは、TU Wienのポール・マイホーファー教授。しかし本当に難しいのは、“安定して読み取れる状態を保つこと”だといいます。
原子レベルの構造は時間とともに拡散し、情報が失われる可能性があります。そこで鍵となったのが“薄膜セラミック材料”です。
この素材は高性能切削工具のコーティングなどにも使われるほど耐久性が高く、過酷な環境でも安定性を維持します。研究チームはこの特性をデータ保存に応用。微細でありながら、繰り返し読み取れるQRコードの作成に成功しました。
つまり、今回の快挙は小さいだけではありません。小さくて、しかも長持ちする──そこが最大のポイントなのです。

