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キヤノンが突如CP+で発表した『アナログコンセプトカメラ』とは何なのか?

写したいのは対象そのものではなく、撮り手の目が感じたもの

長年、雑誌やウェブの仕事に携わっていて、『写真』はその名の如く『真実を写す』ものではなく、『撮影者の意図を表わすもの』だと思っている。例えば、人を撮るにしたって、下側からアオれば尊大に見えるし、見下ろすように撮れば小物に見える。写真はその場にある光を捉えるもので、明るくクッキリ正確に撮れれば良い写真だというわけではない。

だから、ボケで間にある空気を撮り込もうとしたり、ブレや動きを表現しようとしたりする。順光で撮れば対象はきれいに写るとしても逆光にしたり、乱れた光で撮ったりすることもある。それが想いを表現するのであれば、ピントが外れていたり、画角が傾いたりしていても良いのだと思う。

我々だって、日常的に対象をまっすぐに見られないこともあるし、ぼんやりと見ていることもあるし、逆光に目を細めていることもある。そういう気持ちを捉えている写真を、若い人がエモいと捉えているのかもしれない。

キヤノンのエンジニアの方が、キヤノンのエンジニアの方なりにそういう写真を撮れるカメラを作ろうと、模索しておられる過程がこのカメラなのだと思う。

CP+の会場で、このカメラを発想した方々のプレゼンテーションをうかがうことができた。

上田さんと水谷さんがこのカメラを発案し、作られたのだそうだ。お二人とも、普段は正確に美しい写真を撮れるEOSのカメラやレンズを開発している方なのだという。

正確さを突き詰める日常の業務の中から『これだけが写真なのだろうか?』という疑問が生まれ、このカメラに至ったようだ。

その思いを、このようにカッチリとしたプレゼンスライドにまとめるところが、キヤノンのエンジニアさんらしいと思う。それによると、まず若年層を中心に起きているアナログブームについて深く考察を巡らせたとのこと。

デジタル世代であるはずの若者たちが、レコードやカセットテープ、フィルムカメラ、編み物、あるいは自作の手帳といったアナログなものに惹かれる理由。その背景には、単なる結果だけではなくプロセスそのものを楽しむこと、確かな手触りや実体を感じること、そして不完全さがもたらす特有の温かみといった要素があるのではないかと分析したと言う。

それをこのカメラに落とし込んだ。

直に光を覗くファインダーはプロセスを楽しむことを表現している。1枚撮影するたび、横のレバーを回す、そこに実体を感じる。デジタルプロセスの間にアナログを差し挟むことによって、不完全さも実現しているのだという。

EF50mm F1.8のレンズと、V10のセンサー

仕組みはこうなっている。

前方からレンズを介して入った光は、一旦ミラーで跳ね上げられてフルサイズのスクリーンに映し込まれる。そのスクリーンを上から覗き込むように見て、フォーカシングや構図の決定を行う。シャッターレバーを押すとミラーが跳ね上がり、光を反射してカメラモジュールに映像を落とし込む。

現在の試作機は、傑作レンズEF50mm F1.8(高性能で安価でカメラの楽しみを教えてくれたから、愛を込めて『撒き餌レンズ』と呼ばれた)を使用している。センサーモジュールは、Vlogカメラ『V10』のものを使っている。

もちろん、商品化するとなると最適なレンズやセンサーを再検討するのだろうけれど、とりあえず現状あるパーツを使って試作にこぎつけたとのこと。画像はmicro SDカードに記録される。USB-Cで書き出すこともできる。

ユーザーとして、EF50mmを使うのであれば、もしかして『レンズ交換型』にすることもできるのではないか、と想像してしまう。ただ、そうなると望遠レンズをつけた時の重さのバランスや、フォーカシングをどうするかといった極端な問題も発生する。それを考えると、まずは、この50mmでの実現を期待したいという気もしている(筆者の好みを言わせてもらえば、もう少し広角の方がいいが。35mmぐらいを希望)。

デザインも模索中で、左のコンセプトモデルAはレトロな中判カメラ風のデザインになっている。一方、右のコンセプトモデルBはどちらかというと、現在のキヤノンのカメラのデザイン文法に近い、機能をストレートにシンプルな形に表したデザインなのだそうだ。

これもどちらのデザインが良いか検討中だし、多くの一般ユーザーの方の意見を聞きたいと考えているのこと。

配信元: Dig-it

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