住宅購入の際、不動産会社の営業マンが語る「月々の返済額」を鵜呑みにしてはいけない。そこには管理費や修繕積立金、固定資産税といった「見えないコスト」が入っていないことがほとんどだからだ。さらに、長い返済期間の間には、社会や健康状態の変化といった予測不能な事態が起こり得る。
永峰英太郎氏の書籍『人はこんなことで破産してしまうのか!』より一部を抜粋・再構成し、ある夫婦の自己破産事例から学ぶべきことを紹介する。
住宅ローンのセールストークで破産した
「家賃と同じくらいの負担でマンションが買えます!」――。
賃貸物件に住む30代の夫婦が近所を散歩していると、とあるマンションの立て看板のキャッチコピーが目に留まった。
「そんなうまい話があるわけないよ」と笑う夫に対し、妻は「ねぇ、話だけでも聞いてみようよ。子どもが生まれたら、今の部屋だと狭いし」と言うのであった。
営業担当者に会って、現状月10万円の賃貸アパートに住んでいることを伝えると、タブレットで住宅ローンの支払いシミュレーションを見せられ、こう笑顔で言われた。
「月10万円どころか、月9万円の35年ローンで買えますよ。頭金もゼロで大丈夫です」
当時、営業担当者が示した住宅ローンの返済額は、金利の安い変動金利で試算されていたものであった。
その後、契約前の見積もりで、当時不動産会社にとって有利だった固定金利で契約すること、そして、返済費用は10万円を軽く超えることを知った。
「何とかなるよ」が地獄の始まり
その時点で、契約を見送れば良かったのだが、マンションの設備などを見て、どうしても住みたい気持ちが捨て切れず、「まぁ、何とかなるよ」と、2人は購入を決断したのだった。
しかし、何とかなるはずもなく、すぐに住宅ローンの返済に苦しむようになる。
その大きな要因は、年2回のボーナス返済があることと、毎月、修繕積立費と管理費が計4万円かかることであった。賃貸住宅のときは発生しなかった固定資産税も重くのしかかってきた。
夫婦の住宅関連の支出は、月9万円どころか、月16万円を超える状況になってしまっていた。当時、2人の年収は計400万円程度。その2分の1以上が、住宅関連の出費という事態である。
それでも、数年は、何とか支払うことができていた。
しかし、コロナ禍となり、夫の会社の業績が悪化すると、ボーナスのカットも含め、給料は下がる事態に陥る。こうして、貯金の切り崩しが始まった。
しかし、このままの状態ではらちが明かない。もっと給料の高いところで働こうと、男性は転職を決意する。

