映画を彩る役者たち
池ノ辺 今回主演を務めたブレンダン・フレイザーさん、最初から主演は彼で行こうと決めていたんですか。
HIKARI 脚本を書いた時点からではないですが、彼を見た瞬間直感で決めていました。彼の『ザ・ホエール』(2022) を観た時に素晴らしいと思ったんです。こんなお芝居をされてたんだって。もちろん昔のブレンダンは知っていたし大好きだったけど、何年か離れて久しぶりにみたら、表情がすごく豊か。エモーショナルな素敵な役者さんだと。そして上映後の質疑応答を聞いていたら、この人はきっとすごく優しい人なんだろうな、繊細な人なんだろうなと思って、実際会ってみると本当にそのとおりの方でした。
池ノ辺 日本の風景の中にいても全然違和感がなくて。
HIKARI やっぱり日本に来るということ自体に抵抗を感じる役者さんもいらっしゃいます。「脚本は好きだけどちょっと日本は遠い‥‥」って言われたら、他を探さないとダメですからね。そんな中で「僕やりたい」と手を挙げてきてくれたのはほんまに嬉かったですよ。
池ノ辺 日本の撮影もすごく楽しそうだったと聞きました。
HIKARI 本当に? それは嬉しい (笑)。
池ノ辺 監督が元気で、明るくて、とか、こだわりもあるし、とかね (笑)。
HIKARI そうなんですよ、こだわっちゃうんですよ。まあ、こだわりなかったら監督になれないですよね。監督はこだわりの塊だと思います。
池ノ辺 こだわって最初の脚本から変えたシーンもあったとか。
HIKARI 確かに、脚本はスタジオ側と一緒に書いて直してという作業をするので、スタジオ側が言う方向でやらなければいけないというところもあったんですが、そこは戦いました (笑)。
池ノ辺 それがすごいと思ったんです。だって大変なエネルギーが必要ですよ。
HIKARI 必要でしたね。ここはこう変えてほしい、でもここは変えない、じゃあ、1回だけこのままでテストスクリーニングさせて。テストスクリーニングで観客がこのエンディングを気に入ったら、高得点を取ったらこのままで。そんなやりとりでした。
池ノ辺 そこでリサーチしたんですか。
HIKARI そう。それで一回目のテストスクリーニングで92点、2回目で96点、ありえない高得点をいただいたんですよ。
池ノ辺 それはもうキープするしかない、しょうがないね、となりますね (笑)。今回は日本の役者さんたちも何人か参加されていますが、どうでしたか?
HIKARI みなさん素晴らしかったですよ。私が大好きな役者さんたちもオーディションに来てくださって、お会いすることができて嬉しかったですね。今回は、こういう映画なので英語が流暢であるというのを結構重視して決めたんですけど、それでも役者さんって100人いたら100とおり、多様というかアプローチの仕方が全員違ってくるので、いつも楽しくオーディションをさせてもらってます。とはいえ、日本の役者さんてとても真面目な方が多いですね。
池ノ辺 それは監督が言ったことをちゃんとやってくれるってことですか?
HIKARI もちろんそういう面もあるかもしれませんが、私としては「こうしてほしい」というよりは、「どうしたら、ここにたどり着くのか」っていう話をします。私が「こうしてほしい」と言っても、本人が「え? 」と思って納得していなかったら、絶対そこは違和感があるわけだし、それはお芝居に出る。そうじゃなくて、「私はこう思います。どうですかね? 」「いや僕こう思います」「僕はこうだと思うんですけど」「じゃあそこは何でそうなるのか」っていうところをお互いに話して、お互いが納得する落とし所を見つける‥‥。
池ノ辺 それで演じてもらう。
HIKARI 「演じる」というよりは「be」、その存在でいる、そのままになっててください、という感じかな。
映画とは「愛と世界平和」を伝える総合芸術
池ノ辺 ベルリン国際映画祭のコンペティション部門の審査員に選ばれたんですよね、おめでとうございます。
HIKARI ありがとうございます。
池ノ辺 素晴らしい活躍ぶりですね。
HIKARI 実は先ほど事務所から電話があって、次の映画が一つ決まったんです。
池ノ辺 素晴らしい!
HIKARI はい。また発表できるようになったらお知らせしますね。
池ノ辺 次の作品でもぜひインタビューさせてください。では最後の質問になります。監督にとって映画って何ですか。
HIKARI 私にとって映画は、「愛と世界平和」を伝える一つの要素、一つのアート、総合芸術だって思います。私は、最初から映画監督になろう、なりたいと思ってずっとやってきたわけではなく、本当にいろんなことをしていく中で運よく監督になれた。それは奇跡だなっていつも思っているんです。そして、「これをやってみたいな、この自分のオリジナルのストーリーを伝えたいな」、そんなところから映画制作に入ったので、ある意味「ミッション」のように感じている部分があります。つまり、人生の中で自分はこういうことを伝えたいのかな、こういうふうにしたら周りの人たちを幸せにできるかな、そんなことを問い続けている。それは2時間ずっと笑っている、それだけでもいいんです。そんな中でも観た人の心があったかくなるような、あるいは一人一人の意識がちょっとずつでも変わっていけば、いつかはそれが世界平和にもつながっていくんじゃないか、そう信じています。
池ノ辺 今回のミッションは成功でしたね。
HIKARI それはそれは、ありがとうございます。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
撮影 / 立松尚積
監督、脚本 (共同)
大阪出身。デビュー作『37セカンズ』が、第69回ベルリン国際映画祭でプレミア上映。パノラマ観客賞、CICAEアートシネマ賞のW受賞の快挙を成し遂げ、最優秀新人監督賞にもノミネート。過去のテレビ作品には、エミー賞. 受賞シリーズ「BEEF/ビーフ」のパイロット版監督、アンセル・エルゴートと渡辺謙主演、マイケル・マンがエグゼクティブプロデューサーを務めた「TOKYO VICE」がある。また、数々の受賞歴を持つ短編映画も執筆・監督。現在は複数のプロジェクトを開発中。
作品情報
映画『レンタル・ファミリー』
東京で暮らす落ちぶれた俳優フィリップは、日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。そんな中“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。
監督、脚本 (共同):HIKARI
出演:ブレンダン・フレイザー、平岳大、山本真理、柄本明、ゴーマン シャノン 眞陽ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公開中
公式サイト rentalfamily
