
板垣恵介による累計発行部数1億部突破の人気格闘漫画「刃牙」シリーズ。その第4部にあたるアニメ「刃牙道」が、ついにNetflixにて世界独占配信を開始した。地上最強の親子喧嘩を終え、退屈な日々を過ごしていた範馬刃牙の前に現れたのは、クローン技術と降霊術によって現代に蘇った伝説の剣豪・宮本武蔵。シリーズ最大級の“異物”であり“最強の象徴<シンボル>”の武蔵を演じるのは、実写時代劇の経験も豊富なレジェンド・内田直哉。そして、それを迎え撃つ座長・島崎信長。対峙した島崎が肌で感じた「斬られる」という感覚とは?
■「やるだろうな」から「まさか」へ
――いよいよ「刃牙道」のアニメ化、そして配信がスタートします。まずは島崎さん、新シリーズ制作決定を聞いた際のお気持ちからお聞かせください。
島崎 当然、嬉しいです。ただ正直、「いつかはやるだろうな」とも思っていました(笑)。原作は今でも続いていますし、僕自身も、このアニメシリーズはずっと続いていくつもりでやっていますから。
――相撲(「バキ道」)まで行くつもりですか?
島崎 相撲どころか、今原作は「刃牙らへん」ですから。「刃牙」ですらない、「らへん」やってますからね(笑)。
内田 「らへん」って?
島崎 「そのあたり」みたいな(笑)。今の連載は刃牙じゃなくて周りのキャラに焦点を当ててるんですよ。
内田 そうなんだ、知らなかった。

――内田さんは今回がシリーズ初参加。役どころは、あの「宮本武蔵」です。
内田 僕はもうね……ドキドキしてますよ。
――(笑)。ベテランの内田さんがドキドキというのは意外です。
内田 そりゃしますよ。これだけの長い歴史がある作品で、ファンの熱量もものすごいじゃないですか。そこに今回初めて、しかも武蔵という役で出るわけですから。「作品をぶっ壊しちゃったらどうしよう」って(笑)。
――ぶっ壊すんですか?(笑)
内田 まあ、流石にぶっ壊しはしないとは思うけど(笑)。ただ、みんなが「良い」と言うとは限らないし、やっぱり一抹の不安は感じますよ。だからもう、配信が始まるまではずっと「どうにか喜んでいただきたい」と祈り続けます。
――キャスト発表時、SNSでは「内田さんはぴったり!」「納得のキャスティング」という声が多く上がっていましたよ。
内田 そうなんですか?

■レジェンド・内田直哉が挑む“純粋すぎる”武蔵
――内田さんは公式サイトのコメントで、「この歳になってまだ可能性を引き出していただける機会を得た」とおっしゃっていました。数々の役を演じてこられた内田さんにそう言わしめる武蔵の魅力とは?
内田 人間、長く生きていると、どうしても経験の積み重ねだけで仕事をしてしまう瞬間があるんです。正直言っちゃうと、「目をつぶってでもできるような仕事」もこの世の中にはある。でも、この宮本武蔵はそうはいかない。「え、こんなこと要求されるの? どうやったらいいんだ?」って悩むわけです。
――内田さんが悩むほどの役なんですね。
内田 そう。だからこそ感謝しているんです。武蔵は、戦うということの以前に、そもそも人を殺めることを苦にしないと言うか、なんとも思っていないですよね。現代に生きる周りの連中が動揺しているのを見て、「なんで動揺するんだ?」くらいに思っている。その「純粋さ」はすごく面白いですし、同時に悩みどころでもあるんです。

――武蔵には独特の「無邪気さ」と、底知れない「殺気」が同居していますよね。
内田 そうそう。それでいて「クローン」だっていうんだから(笑)。もうそこを考え出すと演じられなくなっちゃうんで、僕としては板垣恵介先生を信じて、セリフを喋るだけ。でもそうすると、ちゃんと相手に伝わるんですよ。
――また「刃牙」シリーズといえば筋肉美の描写も特徴的ですが、内田さんはそのあたりはいかがでしたか?
内田 実は僕も、パーソナルトレーナーをつけてジムに行ってはいるんですけど、それはあくまで健康のためで、筋肉のためじゃないんです。でもたまにトレーナーさんが「直さん、こうやるんですよ」ってポージングの写真を見せてきたりして、「いやだから、このために来てないのよ」って。なのですいませんが、筋肉についてはあまり語れません(笑)。


■「斬られる」と錯覚するほどの説得力。マイク前で対峙した“真剣勝負”
――島崎さんは、内田さんのお芝居を間近で受けていかがでしたか?
島崎 いや本当にもう、「武蔵」なんですよ。特に最初の邂逅シーン。刃牙としては、小僧扱いされてムキになったり反発したりするはずなんですけど、それ以上に「魅力的だな、すごいな」って思っちゃって。
――それは刃牙としても、島崎さんとしても。
島崎 そうです。悔しいけど憧れちゃう、惹かれちゃう。直さんのお芝居から、そういう気持ちが自然と湧き上がってくるんです。「この人にこういうことを言われると嬉しくなっちゃうな」って。
――まさに作中の刃牙と同じ心境ですね。
島崎 そうなんです。もちろん直さんは人を斬ったりはしないですけど(笑)、でも圧倒的な凄みがあって。武蔵の持つ「極致」と「俗っぽさ」の両方を、直さんもお持ちなので、どこか似ているところがあるなって感じます。

――内田さんから見て、刃牙としての島崎さんはいかがでしたか?
内田 まあ、「可愛い子だな」というぐらいな程度で(笑)。
――(笑)。完全に武蔵の目線ですね。
内田 それぐらいの芝居をしてくるんでね。大体わかるんですよ、「まだ本気じゃないな、童(わらべ)やな」みたいな。武蔵にとっては、刃牙はまだ「ボン」でしかないんですよ。
――その余裕が怖いです(笑)。
内田 それよりも前半は、武蔵の興味が社会に向いているのが面白かったですね。「なんでこんな高い建物があるんだ」とか「車はもっとゆっくり走ってくれよ」とか(笑)。そういう導入部がすごく好きでした。
■スタジオはまるで男子校? ロビーで弾けるベテランたちの素顔
――「刃牙」の現場といえば、男性キャストばかりの熱気が特徴ですが、今回の雰囲気はいかがでしたか?
内田 普通、男しかいない現場ってどうしても暗くなりがちなんですけど、今回の現場は賑やかだったね。
島崎 賑やかでしたね! まさに男子校みたいで。
――島崎さんは座長として、現場作りで意識されていることはありますか?
島崎 昔から思っていたのは、ゲストで来た方に「この現場つまんなかったな」とか「置いてきぼり感があったな」って思ってほしくないんです。ベテランの方が来たのに、若い子だけで固まって喋ってるとか、そういうのは嫌だなと。
内田 よくあるよ、置いてきぼり。悲しいよ(笑)。
島崎 ですよね(笑)。だから自分から話しかけたり、学びたいこともたくさんあるので、自然と会話しに行きます。でも今回に関しては、直さんがいらっしゃったことで、また空気が変わりました。直さんがロビーで「久しぶり!」って誰かに声をかけると、そこから輪が広がっていくんです。
内田 まあでも、信長はどの現場に行っても変わらないと思いますよ。座長だからどうこうじゃなくて、性格ですから。変に出しゃばったりもしないし、そういう人間ですね。
島崎 ありがとうございます。直さんは後輩からも慕われているんですよね。江口拓也(花山薫役)とかも、収録後はベタベタとくっついていきますし。
内田 僕、呑むのが嫌いじゃないんでね(笑)。

――では最後に、ファンへメッセージをお願いします。
島崎 ここからは、さらにグイグイと宮本武蔵という人間に踏み込んでいく内容になります。そして、様々なキャラクターたちの生き様にも注目してください。
内田 島崎くんをはじめ、キャスト全員が熱量を持って演じています。武蔵が現代で何を感じ、どう生きたのか。その「純粋さ」を感じ取っていただければ幸いです。
――ありがとうございました。
※島崎信長の“崎”は、正しくは「たつさき」。
◆取材・文/岡本大介


