
「楳図かずおの『ウルトラマン』」上巻 著:楳図かずお(小学館)
【画像】え…っ!「ビジュアル怖すぎ」こちらが楳図かずお版「バルタン星人」です
不気味さ増したバルタン星人
「ウルトラマン」シリーズ屈指の人気を誇る「バルタン星人」。セミのような顔、巨大なハサミ、そして不気味な笑い声――その独特のビジュアルは、初登場から半世紀以上を経た今もなお、多くのファンを魅了し続けています。実は、ホラー漫画の巨匠・楳図かずお先生が手がけた『ウルトラマン』のコミカライズでは、このバルタン星人がさらに不気味な姿で描かれていることをご存じでしょうか。TV放送されたオリジナル版と比べると、ホラー&怪奇色が強いエピソードや描写も多く、楳図かずお節満載のマンガに仕上がっているのです。
楳図かずお版『ウルトラマン』は、1966年のTV放送開始と同時期に「週刊少年マガジン」で連載されました。「ウルトラマン」シリーズ屈指の人気怪獣であるバルタン星人が登場する冒頭エピソード「バルタン星人の巻」は、まさに楳図先生のホラー作家としての本領が発揮された内容となっています。
物語は、岩手県で謎の赤い雨が確認されたことから始まります。血のようにまがまがしく降り注ぐ物体の正体は、バルタン星人たちがバクテリア状になったもの。宇宙を放浪していた彼らは、地球を自分たちの入植地にするべく、人類に寄生しようとしていたのです。
最初の被害者である神山博士は、赤い雨の調査中にバクテリアに触れてしまい、バルタン星人に意識を乗っ取られてしまいます。深夜に起き出した神山博士は、ガソリンを美味しそうにゴクンゴクンと飲み干します。赤く血走った目、血をすすったばかりの吸血鬼のようにガソリンを口元から滴らせる姿は、もはや人間ではなく怪物そのもの。ウルトラマンファンの子供たちが本作を読んだなら、恐怖を感じずにはいられないでしょう。
またエピソードだけでなく、バルタン星人そのもののビジュアルも、オリジナル版と比べるとより不気味な仕上がりになっています。背中にはセミのような羽が2枚付いており昆虫テイストが強調され、虫が苦手な人なら思わず嫌悪感を抱いてしまいそうです。また特徴的なハサミは、血管が浮き出ているうえに鋭い牙も飛び出す仕様になっています。オリジナル版の愛嬌あるバルタン星人とは一線を画す、まさに「怪物」としてのバルタン星人が描かれているのです。
「バルタン星人の巻」は全10話構成で、大部分がオリジナル展開となっています。なぜこれほどまで自由な作風で描けたのでしょうか。
実は楳図先生のマンガ連載がスタートしたのは、本家『ウルトラマン』が放送される前のことでした。先行連載として、放送がスタートした時点では4話分が掲載済みで、番組制作と同時進行だったため、オリジナル色が強くなっていったのです。実際、回を追うごとにTV番組とリンクする部分も出てきますが、全体として楳図かずお節全開の本作は、数あるウルトラマンのコミカライズ作のなかでも唯一無二の存在感を放っています。
オリジナル版の『ウルトラマン』とは一味も二味も違う、ホラー色満載のバルタン星人との戦いを、ぜひこの機会に体験してみてはいかがでしょうか。
