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今回お話を聞いたのは、アクション映画を中心に活躍する、スタントパフォーマーで俳優の伊澤彩織さんです。『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』などの人気作品に参加し、2021年にスタートした『ベイビーわるきゅーれ』シリーズでは、映画3作品と連続ドラマで俳優の髙石あかりさんとともにW主演を務めました。
アクションを始めて数年間はアルバイトを続けながら「毎日漠然とした不安を抱えながら生きていた」と話す伊澤さんが、どのように自分らしいはたらき方を見つけたのか。アクションの現場のリアルとともに、“好き”を仕事にしてきた12年間で気付いた仕事の楽しみ方をお話しいただきました。
派手な乱闘シーンから、日常の転倒シーンまで。幅広いアクションの仕事
──まずは、伊澤さんが普段携わっているアクションのお仕事について教えていただけますか?
撮影現場には、撮影部や照明部、美術部のように、部署として「アクション部」もあります。アクションの仕事というと殴り合いの喧嘩をしたり、車にはねられたり、映像的に派手で危険なシーンを担当するイメージを持っている方も多いかもしれません。もちろん、そういう仕事もたくさんありますが、アクション部としての仕事は実際にはもう少し幅広く、俳優さんのアクションを代わりに演じるスタントダブルからワイヤーやマットの補助、練習用武器などの小道具制作までさまざまです。派手なシーンだけでなく、周囲の人の怪我のリスクを減らし、安全に現場を進めるための役割を担うのもアクション部の大事な仕事です。

昔現場に入って印象的だったのが、山で子役が転ぶシーンのサポートです。アクション部3人で地面を削り、マットを埋めて、映像で見ても違和感がないようにその上を土でカモフラージュして。シーンの前には子役の衣装の下に膝パッドや肘パッドを仕込んだり、うまく転ぶ方法を教えたりしました。
他にも、万一に備えて少し高い場所に立っている俳優にワイヤーを付けるなど、日常のシーンであっても、カメラの前に立つ人が少しでも安心して臨める体制を現場でつくっていくのがアクション部の仕事です。
アクションの基礎を叩き込んでくれた師匠の急死。「その熱量を引き継ぎたい」
──伊澤さんがアクションと出会ったのは、日本大学芸術学部映画学科に在学中のときだと伺いました。どのようなきっかけがあったのでしょうか?
大学に在学中、はじめて参加した撮影現場で、アクション部として参加したのがきっかけでした。「こんな部署があるんだ」と思ったのが率直な感想で、知らない世界をもっと見てみたいという好奇心で、その次、また次と徐々に現場に入るようになって。
身体能力に自信がなかったものの、自分自身がこれからもっと動けるようになればサポート以上の仕事、たとえばスタントなどにもチャレンジできそうだと、キャリアの可能性を感じてアクションという分野にどんどんのめり込んでいきました。

──大学生というと、これからのキャリアについても考えはじめる時期だと思います。就職活動をする学生も多い中、「アクションの世界で生きていく」と決められたのはなぜでしょうか?
周囲の子たちがインターンシップに参加するのと同じような感覚で、私も撮影現場に行っていたので、卒業後もアクション部として現場に関わっていくのだろうなと漠然と思っていました。ただ、今振り返ってみると、「アクションの世界で頑張っていこう」と思えた明確なきっかけが、2つあります。
1つは、私にアクションの基礎を叩き込んでくれた先生・田中清一さんが他界されたことです。訃報を聞いたのは大学3年生の夏休み、大阪で撮影していたジョン・ウー監督の映画『マンハント』に参加していたときでした。お葬式の日がちょうど撮休日だったので、日帰りで東京に戻って参列しました。
そのときに、生前に先生から言われた言葉を反芻していたんです。「彩織はきっとアクションで人を感動させられるパフォーマーになるから、続けてほしい」と。それまではアクションを仕事にするのかどうか、あまり深く考えていなかったんですが、「アクションで人を感動させるってどういうことだろう」と大きな問いをもらったような気がしました。先生からいただいた言葉の数々をお葬式中に思い出したことで、「先生がこれまでアクションにかけてきた熱量を自分が引き継ぎたい」と思うようになりました。

もう1つのきっかけは、卒業式で学科の賞をいただいたことです。優秀賞ではなく、ユニークな活動をした学生に贈られる賞で、私は「器用に何でもこなせるがすぐに飽きてしまう資質が災いし望む成果に近づけない日々を過ごしながらもようやく見つけたアクションスターへの道 映像制作でも披露されたあなたの華麗なアクションに対して」の賞だったと思います。
留年もしていて、まさか自分が選ばれるなんて思ってもいなかったので、本当に驚いて。お世話になった先生から賞状を受け取った瞬間、「この先やっていけるかな?」という不安よりも、先生方に胸を張って「やりましたよ」といえる活動をしていこうという気持ちになったんです。背筋がすっと伸びる思いでした。


