転機となった『るろうに剣心』。「この道で生きていく勇気をもらえた」
──大学を卒業してから2~3年、映画『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』の撮影に参加するまではアルバイトをしながらアクションの練習に打ち込む日々を送っていたとか。当時は「はたらく」ことに対してどのように考えていましたか?
撮影現場のメイキングカメラ、電子タバコの販売、テープ起こしなど、当時はいろいろなバイトをしていましたね。アクションの仕事でもギャラは発生していたものの、やっぱりそれだけでは生活していけなくて。バイト自体は楽しかったものの、この先どうなるのか分からない漠然とした不安が毎日ありました。現場に行けるのはうれしいけど、自分は果たして“仕事”をできているのだろうか、と。
でも、そんな不安を先輩に相談したところ、「1円でもお金が発生している以上、プロだからね」と釘を刺されて。「プロとして自分の役割を考え、しっかり対価を得られる人間にならなければ」と思い、はたらくこと・お金をいただくことに対して真剣に考えるようになりました。
その後、『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』ではじめてレギュラーで撮影に参加させていただき、長期間現場に通いつめる日々を経験したんです。今でもこの先のキャリアに対する不安はあるものの、『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』へ参加できたことで、ようやくアクションを仕事にできた感覚が生まれました。

──これまでのお仕事で特に印象に残っている現場はありますか?
感情が常に大きく揺さぶられていた現場は、やっぱり『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』ですね。先輩のスタントを見ていて言葉を失うような経験を何度もして、「自分はなんでうまくできないんだ」と悔しい思いをすることもありました。でも、はじめて爆破のスタントを任せてもらって、爽快感を味わうとともに、「やっとスタントパフォーマーと名乗れる」と思えて。慌ただしく壮絶な毎日をすごす中で、学ぶことも多く、この道で生きていく勇気をもらえた現場でした。
──2026年2月16日に発売された自身初のフォトブック『PLAYer1』(KADOKAWA)には『るろうに剣心』シリーズで主演を務めた俳優・佐藤健さんとの対談も収録されていますね。
『るろうに剣心 最終章 the Beginning & the Final』の撮影時は直接お話しする機会はほとんどなかったのですが、その後、別の現場でお会いしたときに「『ベイビーわるきゅーれ』観たよ」と声をかけてくださって。小さいころから佐藤さん主演の『仮面ライダー電王』の大ファンだったこともあり、あのときは本当にうれしかったです。

そこから、何度かアクション練習会でご一緒するようになりました。ご縁があったとはいえ、お忙しい方なのでまさか対談ゲストのオファーを受けてくださるなんて、私自身が一番驚いています。対談では勇気づけられる言葉をたくさんいただいて、また同じ現場に立てるように頑張ろうと心の底から思いました。

「“やりたいからやってんだよな”と思っていたい」
──先ほど撮影へのレギュラー参加について「壮絶な毎日」とおっしゃっていたように、映画の撮影期間は生活リズムが不規則になることも多く、特にアクション部となるとかなりのハードワークだと想像しています。これまで仕事に対して「もうしんどい」「行くのがつらい」と思ったことはありますか?
過去に「行きたくない」と思ったことはありますね。一度受けた仕事に対して真摯に向き合えない自分が情けなくなる瞬間もありました。撮影現場に限らず、どんな仕事でも真面目にはたらいてきた人ほど、同じような経験があるんじゃないかと思います。
もし途中でやめてしまうと誰かに迷惑をかけることになるから、しんどくてもやり遂げるのが一番誠実だけど、限界のサインは知っておくべきかなと。どうしても心と体が離れているときは無理しないほうがいいと思っています。ただ、行かない選択をしたあとに待っているのは、後悔と周囲からの信用を落としてしまうかもしれない怖さなんですよね。
最近は自分の状態を冷静に俯瞰して、キャパオーバーかもしれないお仕事は最初から受けない、十分に見極めて選ぶ勇気を持てるようになってきましたが……それでも難しいですよね。ずっとフリーランスでやってきているので、自分の心身を守りながらも、他者から信用してもらえる自分でありたいと思っています。

──この先、やってみたいことはありますか?
ふんわりしていますが、アクションの可能性をより広げていきたいです。2024年から、俳優の水石亜飛夢くんが代表を務める一般社団法人BeAHERO主催の「アクション体験会」のゲスト講師を務めていて、一般の方にアクションを体験してもらうイベントを定期的に行っているんです。毎回自分の想像を超えたアクションの楽しみ方・遊び方がまだまだ隠されていることに気付かされています。こうした一般的にはまだメジャーではない活動を、アクションに関わる方々と一緒に継続的に取り組んでいきたいと思っています。
──最後に、スタジオパーソルの読者である「はたらく」モヤモヤを抱える若者へ、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするために、何かアドバイスをいただけますか?
楽しんで、遊び心を持ってはたらくためには、自分は何が好きなのか、やりたいのかを自覚することが大事だと思います。私もよく自問自答しているんです。何が楽しくてアクションの仕事をやってきたんだっけ、どんなところに惹かれたんだっけ、と。

何かにときめいたり、好奇心が湧いたりしてアクションを始めたんだと思うんです。「その選択をした自分」をまず好きになりたいし、皆さんにも「その道を選択した自分」を好きになってほしいです。
自分で選んで、やりたいことをやれている人はかっこいいと思うし、自分も「やりたいからやってんだよな」って思っていたい。あきらめずに続けていたらきっといいことがあると思うので、一緒に頑張りましょう。

(「スタジオパーソル」編集部/文:水元琴美 編集:いしかわゆき、おのまり 写真:凪 / ヘアメイク:赤井瑞希 スタイリスト:八尾崇文)

