性加害者を“別名義”で起用し続けた説明不足
なぜ、これほどの反発が噴き上がったのか。背景には、小学館が抱える倫理観への疑念がある。
2020年、ある漫画家が児童買春・ポルノ禁止法違反で逮捕され、罰金刑を受けた。通常であれば出版社は契約解除などの措置を取るが、小学館は2022年、この人物を別名義「一路一」として再起用し、『常人仮面』の新連載を開始していた。
罪名を伏せ、名義を変え、読者や他の作家に説明しないまま連載を続けていたことが、後に大きな火種となった。
さらに2025年の民事判決では、担当編集者が加害者側のLINEグループに参加し、被害女性に「口外禁止条項つき公正証書」の作成を助言していた事実が明らかになった。
出版社側は“和解協議の一環”と説明しているが、被害者側からは“沈黙を促す行為ではないか”という受け止めも生まれ、疑念は一層深まった。
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看板作家たちの“集団離脱”が止まらない
小学館は2月28日の声明で、これまで伏せていた罪状を初めて明記し、調査委員会の設置を発表した。しかし、和解協議に関与した編集者の処分については沈黙を続けている。この“説明の欠落”が、作家たちの怒りを決定的なものにした。
『あさひなぐ』のこざき亜衣氏は「組織としてありえない」と断じ、『二月の勝者』の高瀬志帆氏も「配信停止を提言した」と明言。伊勢ともか氏は「昨日までは誇りだったが、今は恥ずかしい」と胸中を吐露し、『干物妹!うまるちゃん』のサンカクヘッド氏も「読者が安心して読める環境ではない」として全話停止を決断した。
“才能さえあれば何をしても許される”という空気があったのではないか――。そんな疑念が作家たちの間で共有され、彼らは自らの作品を引き揚げるという最大の抗議手段を選んだ。
