悪循環をほどくカギは“勝手に浮かぶ考え”との付き合い方

今回の研究から見えてきたのは、「どんな秘密を持っているか」だけではなく、「その秘密がどんなタイミングで、どんなふうに頭に浮かんでくるか」が、私たちの気分にとってとても大事だ、ということです。
研究チームは、秘密についての思考には大きく2種類あると整理します。ひとつは、勉強中や仕事中にふと割り込んでくる意図しないもの。
もうひとつは、あえて時間をとって、秘密の意味や将来のことを考えようとする意図的な思考です。
今回の結果は自分の意思とは関係なく、ふと勝手に思い出してしまうタイプの秘密が、今の気分だけでなく、2時間後くらいの気分まで悪くなりやすい、というパターンがくり返し見られました。
では逆に、なぜ凹んでいるときに秘密が意図せず脳裏をよぎりやすいのでしょうか?
心理学では、人間の脳は「いまの気分に合った記憶」を呼び出しやすい、という性質を持っていると考えられています。
うれしい気分のときは、自然と楽しかった思い出や、うまくいった体験を思い出しやすく、逆に落ち込んでいるときには、失敗したことや恥ずかしかったことを思い出しやすくなります。
これを専門的には「気分一致効果」と呼びます。
だから、もともと気分が落ちているときには、その気分と「色」が似ている秘密の記憶が、心の中の棚からスッと引き出されやすくなるのかもしれません。
研究者の一人は「私たちは、望んでいないときに秘密を思い出してしまい、そのたびにさらに悪い気分になる悪循環に陥っているようです」と述べています。
もちろん、この研究にも限界があります。
まず、対象はイギリスとオーストラリアの成人にかぎられており、日本をふくむ他の国でも同じ結果になる保証はありません。
それでも秘密について、「考えるのが意図的かそうでないか」「どんな内容を考えているか」「今と2時間後の気分」がどうつながっているのかを、日記とスマホを使って、ふだんの暮らしの中でていねいに追いかけたデータは、今後、「どうすれば秘密との付き合い方をラクにできるか」という研究の出発点になるでしょう。
著者たちは、秘密についての意味づけを少しちがう角度から考えなおす「認知的再評価(ものの見方を意識して変えなおす考え方)」のようなアプローチが、今後検討すべきひとつの方法になりうると書いています。
もし今度、脳内に秘密が意図せず頻繁に浮かぶことがあったら、悪循環を断つために、自分の秘密の見方を考え直すといいかもしれません。
元論文
The Nature and Consequences of Mind-Wandering to Secrets
https://doi.org/10.31234/osf.io/7u2rm_v1
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

