MotoGP開幕戦タイGPでは、ヘルメットのホモロゲーションを巡って、ライダーが対応を迫られることとなった。
アプリリアのマルコ・ベッツェッキが圧勝したタイGP。2025年シーズンとは違う勢力図となりそうな雰囲気も感じさせたこのレースウィークは、アプリリア陣営が注目の的だった。
ただこの週末で少し別の場所で異例の事態が起こっていたことにも注目したい。
それはライダーが装着しているヘルメットだ。開幕戦ではフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ/SUOMY)、エネア・バスティアニーニ(テック3/KYT)、ディオゴ・モレイラ(LCR/KYT)の3人が、契約先とは異なるメーカーのヘルメットを使用していた。
混乱の原因は、FIMが定めた最新のホモロゲーション規格「FIMFRHPhe-02」にある。この規格は3年前に導入が発表され、今季から施行された。
今回の改定では、ヘルメットシェルの衝撃試験が大幅に厳格化されたことに加え、クラッシュ時にバイザーが脱落しないようにする点が特に重視された。安全性向上のための基準だが、ヘルメットメーカーには負担となっていた。なおヘルメットのサイズごとに個別でホモロゲーションをとらなくてはならないなど、認証取得プロセスも一層複雑化していた。
タイGPで影響を受けたのは、インドネシア企業のPT Taraグループのヘルメットを使うライダーだ。同企業はKYTとSUOMYを傘下に収めている。
この2メーカーは、タイGP開幕直前の木曜午後(2月27日)にホモロゲーションを取得した。
ギリギリながらもホモロゲーション自体は無事に取得していたKYTとSUOMY。しかし認証ラベルを印刷できるのがスイスにあるFIM本部のみだったことが、事態を難しくした。
PT Taraのスタッフはスイスへと移動し、金曜日にその認証ラベルを受け取った。そしてカタール・ドーハ経由でタイへと向かう便に搭乗していた……だがここで別の問題が発生した。アメリカとイスラエルによるイランに対する軍事行動だ。
その結果、バンコク行きのフライト出発からわずか2時間後にドーハ空域が封鎖してしまったのだ。
こうした事態の中、ライダー達はホモロゲーションが間に合わない可能性も認識していて、承認済みのライバルブランドのヘルメットを用意していた。そしてそのヘルメットは通常のデザインを再現しつつも、契約関連の問題を避けるために、ヘルメットブランドは隠された形で使用された。
タイGP初日にバスティアニーニはアライのヘルメットを使用した。ただ彼は快適に感じられていなかったようで、2日目にはアルパインスターズのヘルメットに変更していた。バニャイヤもアルパインスターズのヘルメットで代用しており、アルパインスターズは随時フィードバックを確認していたようだ。
なお最終的に3日目、決勝日にはそれぞれのヘルメットの準備が間に合い、本来のヘルメットでウォームアップセッションから着用することができた。とはいえ、MotoGPライダーが本来の契約先と異なるヘルメットで走るというのはなかなか珍しい事態だったと言えるだろう。

