レギュラーシーズンをなんとか「貯金1」で終えた阿部巨人で、覚醒した選手がいる。2年目の泉口友汰だ。今季最終戦となった中日戦(10月1日・東京ドーム)に3番・遊撃で先発出場。全打席で出塁して打率3割1厘、出塁率3割6分1厘で終えた。この時点で打率はリーグ2位、出塁率はトップである。
巨人で3割打者誕生は坂本勇人以来、6年ぶり。プロ入り2年目以内となると、2011年に首位打者になった長野久義以来、なんと14年ぶりとなる。「シーズンが終わってついてきた数字、結果的に良かった」と本人は神妙なコメントだった。開幕2軍スタートだったにもかかわらず、巨人待望の「打てる遊撃手」が誕生した。
2023年ドラフト4位で巨人に入団したのは「内野の守備要員」だった。
「大阪桐蔭時代は、中日に入団した1学年下の根尾昴の控えの存在でした」(アマ野球担当記者)
ルーキーイヤーの昨シーズンは打率2割1厘で、本塁打はわずか1本。そんな泉口の打撃覚醒には、主砲・岡本和真の存在が大きかった。
「岡本は巨人の選手以外からも『自主トレを一緒にやらせてください』という弟子入り志願があとを断ちませんでしたが、全てノーでした」(巨人担当記者)
そんな中、岡本は今季始めにはなぜか、泉口の弟子入り志願を快諾。
「岡本から900グラム近くあるバットを譲り受けて、それを使い始めてから打てるようになりました」(前出・巨人担当記者)
岡本が長期離脱した際には自宅に見舞いに行ったり、試合後は2人でLINEを使った「打撃教室」の毎日。前半戦終了時はセ・リーグ打率ランキングに「3割打者不在」という史上初の事態が起きた。
後半戦にしっかりそれを覆した泉口の目標は「チームの顔」になること。下剋上日本一を目指す阿部巨人のキーマンであることは間違いない。
(小田龍司)

