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土器の「焦げ付き」から7000年前の”地域料理”が明らかに

土器の「焦げ付き」から7000年前の”地域料理”が明らかに

7000年前のレシピの再現 / Credit:Lara González Carretero ,CC-BY 4.0

7000年前の東ヨーロッパの河岸にいる人々を思い浮かべてください。

食事時の彼らの皿には何が入っていたでしょうか。

狩猟採集民と聞くと、多くの人は、獲物や魚を比較的単純に調理して食べていた姿を思い浮かべるかもしれません。

しかし最新の研究は、そのイメージが大きく単純化されている可能性を示しています。

イギリスのヨーク大学(University of York)の研究チームは、古代の土器に残った炭化した食物の痕跡を分析することで、当時の人々が魚や植物を組み合わせた多様な料理を作っていた可能性を示しました。

この研究は2026年3月4日付の『PLOS ONE』で発表されています。

目次

  • 土器の「焦げ付き」を分析し、7000年前のレシピを解明
  • 7000年前の「地域料理」とは?魚や植物の組み合わせが発見される

土器の「焦げ付き」を分析し、7000年前のレシピを解明

古代人の食生活を調べるため、考古学では長年「残留脂質分析」という方法が使われてきました。

これは土器に残った脂肪成分を分析することで、どのような食材が調理されていたのかを調べる技術です。

この方法によって、古代の人々が魚や肉、乳製品などを調理していたことが分かってきました。

しかし、この方法には見落とされやすい弱点があります。

それは、脂質が豊富な食材ばかりが検出されやすいという点です。

動物の脂肪は長く残りますが、脂質の少ない植物は検出されにくくなります。

そのため古代の食生活は「肉や魚中心だった」というイメージが強くなりがちでした。

さらに考古学資料そのものにも偏りがあります。

動物の骨は何千年も残ることがありますが、植物は腐って消えてしまうことが多いのです。

つまり、これまでの研究では植物の利用が過小評価されていた可能性があります。

そこで研究チームは、別の証拠に注目しました。

それが土器の内側に残る炭化した焦げ付きです。

料理の際に鍋の内側にこびりついた食物は、炭化すると微細な細胞構造が保存されることがあります。

これを顕微鏡で観察すれば、植物の種子や果実、葉などの組織を識別できる可能性があるのです。

研究チームは北ヨーロッパから東ヨーロッパにかけての13遺跡から出土した、焦げ付き有りの土器85点を調べました。

年代は紀元前6000年から3000年ごろで、現在から約8000~6000年前に相当します。

その結果、85点のうち58点で植物組織を見分けられるほど状態のよい痕跡が見つかりました。

分析には顕微鏡観察だけでなく、残留脂質分析や安定同位体分析も組み合わせました。

こうした複数の方法を併用することで、動物と植物の両方の痕跡をより確実にとらえることができます。

結果として、草本植物の種子、ベリー、葉、地下茎など、さまざまな植物が土器の中で調理されていた痕跡が確認されました。

しかも多くの場合、それらは魚などの水生資源と一緒に調理されていました。

では、具体的にどの地域でどんな組み合わせが見つかったのでしょうか。

7000年前の「地域料理」とは?魚や植物の組み合わせが発見される

研究で特に興味深かったのは、地域ごとに異なる食材の組み合わせが見つかったことです。

これは古代の食事が単なる栄養摂取ではなく、一定の調理習慣や文化的な選び方を伴っていた可能性を示しています。

例えばポーランドのドンプキ遺跡では、淡水魚とセイヨウカンボク(Viburnum opulus)の実を組み合わせた痕跡が目立ちます。

セイヨウカンボクの実は生だと苦く、加熱すると強い匂いも出ます。

研究チームは、「こうした実が魚と一緒に調理されることで食べやすくなったかもしれない」と論じています。

さらに興味深いのは、この実が遺跡の一般的な植物遺骸にはあまり現れないのに、土器のフードクラストの中には繰り返し現れる点です。

つまり日常的に何でも食べていた植物というより、魚料理のために選ばれていた材料だった可能性があります。

別の地域では違う組み合わせが見つかりました。

ロシアのドン川流域では、淡水魚と野生のイネ科植物の種子やマメ科植物の種子を組み合わせた痕跡が確認されています。

これは、魚に草の種子や豆類を加えて煮た料理だった可能性があります。

またデンマークのSyltholm II遺跡では、ヒユ科植物の葉や茎、花といった「青菜」にあたる部分や、海浜植物の塊茎などと魚を組み合わせた痕跡が確認されました。

さらに一部の土器では乳製品由来の脂肪も検出されており、狩猟採集民が近隣の農耕民と交流し、乳製品を料理に取り入れていた可能性も示唆されています。

こうした結果が示すのは、狩猟採集民の食事が単に魚を食べるだけのものではなかったという点です。

どの植物を、どの水生資源と組み合わせるかには地域差があり、その違いは利用できる環境だけでなく、集団ごとの調理習慣も反映していた可能性があります。

そして、この研究は土器の役割についても重要な示唆を与えています。

土器によって食材を煮込んだり、混ぜ合わせたりする調理がしやすくなり、こうした複合的な料理が広がった可能性があるのです。

土器の内側に残った小さな焦げ付きは、7000年前のシェフたちの工夫を今に伝えています。

参考文献

Ancient Pottery Reveals the Secret Recipes of Stone Age Chefs: Meat, Plants, and Diverse Combinations
https://www.zmescience.com/science/archaeology/ancient-pottery-reveals-the-secret-recipes-of-stone-age-chefs-meat-plants-and-diverse-combinations/

Analysis of charred food in pot reveals that prehistoric Europeans had surprisingly complex cuisines
https://www.eurekalert.org/news-releases/1117763

元論文

Selective culinary uses of plant foods by Northern and Eastern European hunter-gatherer-fishers
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0342740

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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