仕事の午後休を隠し、買い物の中身までごまかす夫。パートナーのウソがあまりに多いことに疲れ果て、「もう信じられない」と嘆く妻。さらには浮気疑惑まで生じ、揺れに揺れるる夫婦関係をひもとくと、そこには夫の意外な背景が深くかかわっていた。
『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』より一部抜粋、再構成してお届けする。なお、プライバシーへの配慮から本文中の名前は全て仮名。
噓の多い夫 GPSを付ける妻
「とにかく夫は噓が多いんです」
幸恵さん(33歳)が言いました。
「細かな噓がすごく多くて。だから私、浮気しているんじゃないかって思って」
隣では夫の浩一さん(32歳)が両手をぎゅっと握りしめて、うつむいています。
「本人は浮気してないって言い続けてますけど、これだけ噓が多いと、もう信じられなくて」
浩一さんの噓は結婚当初からとの事。
「具体的にはどんな噓ですか?」
私が尋ねると、幸恵さんが答えます。
「些細な噓が多いです。午後休暇を取って飲みに行っていたとか。『仕事で遅くなる』って連絡が来たけど、実は趣味のサイクリングに行っていたとか。私、そんな事で怒ったりしないのに」
幸恵さんはそう言った後、「でも、大きな噓もあります」と付け加えました。
「残業と言っていたのに、実は女の子と飲みに行っていた、という事がありました。でも別に同僚の女性と飲みに行ったくらいで怒りません。正直に言ってくれれば。私も同僚の男性と飲みに行く事もあるし」
「それは」
浩一さんが話し始めます。
「相談に乗っていただけで」
「だから正直に言えばいいじゃない。それも1回じゃないし。そうそう、買い物を頼んだ時、いつもと違うお店のレシートだったので、『どうしたの?』って聞いたら、自分の洋服も見に行ってたそうなんですね。でも、『いや、それは』とか言い訳ばかりして、正直に話してくれるまで時間がかかりました。あ、自分で買った物を隠してる事も多いです。洋服とか。言えばいいのに」
確かに、浩一さんの噓は多く、しかもつかなくてもよい噓が多いのは間違いないようです。
夫婦揃った所で浩一さんの本音を聞くのは難しいと思い、それぞれ行う生い立ちの聞き取りの時に、噓の原因について聞く事にしました。
妻が逐一行動を把握しようとする
「どうして噓をつくのか、お聞きしてもいいですか?」
浩一さんのカウンセリングの冒頭、私は尋ねました。
「自分でもよく分からないというか。なんとなく噓をついちゃって、後から自分でも『正直に言えば良かった』と思う事が多いです」
私はさらに尋ねました。
「例えば、午後休暇を取って飲みに行く、というのは、うしろめたさみたいなのはありましたか?」
「それは……少しあったと思います」
浩一さんはそう答えた後、
「妻は結構細かいんです。僕の行動も逐一把握しようとするというか。誰とどこに行っていたとか。怒らないとは言いますけど、だからといって口出ししない訳でもなくて。『それって必要なの?』と聞かれたりする事もあって」
私はさらに尋ねます。
「女性の相談に乗っていた事も、咎められると思いましたか?」
浩一さんは「うーん」と首をかしげながら、
「前に話した時に『それって、なんであなたに相談するの? 同性に相談すればいいのに』と言われた事があって。また反対されるかな、と」
と説明しました。

