なぜ夫はどうでもいい噓までついてしまうのか
「噓をつくのはやめたいとお考えですか?」
私が尋ねると浩一さんは頷きました。
「なんか、無駄に噓をついて責められての繰り返しなので、自分でも直したいとは思っています」
噓の原因をしっかり分析することが鍵となります。浩一さんは東京出身で、一人っ子。私がお父さんについて尋ねると、
「父は商社マンで多忙でした。単身赴任だった時期も何回かあって、父と過ごす事はあまりなかったです」
「では、お母さんと2人で過ごす事が多かったんですね?」
「ええ」
浩一さんは頷きましたが、少し表情が暗くなった気がしました。
「お母さんはどんな性格の方ですか? 社交的とか、おしゃべりとか、厳しいとか」
私が尋ねると、浩一さんは少し間をおいてから答えました。
「母は……厳しい、というか細かかったです。神経質というのではなく、私の行動について、口うるさかったというか」
「何かと干渉してきた、という感じですか?」
浩一さんは軽く頷き、
「はい。過干渉だったと思います」
と言いました。男性は、親とのエピソードをあまり覚えていない方が多いので、浩一さんのようにはっきりと言うのは、実際にかなりの過干渉だったのかもしれません。
「反発はしなかったんですか?」
「しましたけど……1言えば100返って来るので、面倒くさくなって」
浩一さんによると、携帯も、鞄の中も、部屋の中も母親は常にチェックしていたそうです。
「彼女とか、出来ましたよね?」
浩一さんは苦笑を浮かべ、
「もちろん隠してました。ばれたら大変ですから」
と言います。
「それからも毎回反対されました。結局誰でもダメってことなんですよね」
それを聞いて、私は当然の疑問を口にしました。
「じゃあ、お母さんには隠し事もしていたし、噓をつく事も?」
「しょっちゅうでした」
浩一さんがそう答えたので、
「お母さんとの関係で、噓をつく癖がついてしまったんでしょうね」
私がそう言うと浩一さんはため息をつきながら頷き、
「今、話していてそうだったんだなって思いました」
と言って、もう一度ため息をつきました。
妻と母親が重なってしまう
心理テスト結果からは母親への強い拒否感、葛藤と同時に、母親からどう見られるかを気にする傾向が認められました。おそらく子どもの頃はこの傾向がもっと強かったのだろうと推察されます。
幸恵さんに対する愛情は確かですが、やはり、どう見られるかを気にする傾向と、自己否定感の強さも認められました。
「干渉されるって事は、信じてもらえていないと感じる事につながるので、それが自己否定感となってしまったんですね」
私がそう言うと、浩一さんは、
「いつも母に咎められていたので、『うるさいな』と思う気持ちと、自分はダメな人間だ、という気持ちが混在していた気がします」
そう言ったあと、
「幸恵は、少し母に似ている感じがするんです」
とまたため息をつきました。
「好きだし、尊敬もしているし。でも、『誰と行くの?』『今日はなんで飲みに行く事になったの?』とか聞かれると、ちょっと母の事を思い出すというか」
幸恵さんと母親が重なる。だからちょっとした事でも、怒られる、咎められるという不安を抱いてしまい、つかなくてもいい他愛もない噓をついてしまう。それが浩一さんの噓の原因でした。
文/山脇由貴子

