
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 「こりゃ日本離れられないわ」 コチラが1893年に生まれた『ばけばけ』小泉八雲・セツの「可愛すぎる長男(1歳くらい)」の写真です
放浪の人生だったが
放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』第22週109話では、ついに主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」に、子供を身ごもったことを告げました。それまで、単身赴任してフィリピンで滞在記を書く道を考えていたヘブンでしたが、子供が産まれると分かると大喜びし、その場でずっとトキと日本で暮らすと断言しています。
ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンが、帰化して小泉八雲となり、日本で54年の生涯を終えた(1904年9月死去)理由は、1893年11月17日に長男の一雄が生まれたからというのが定説です。
ハーンはギリシャで生まれ、アイルランドで幼少期を過ごし、アメリカで新聞記者をしていた約20年間の間には、シンシナティ、ニューオーリンズ、ニューヨークに住み、その間に西インド諸島の仏領マルティニーク島でも2年間を過ごすなど、放浪の人生を送っていました。1890年に日本に来てからも、横浜、松江、熊本、神戸、東京と各地を転々としていますが、松江で小泉セツと出会い家庭を持っていなければ、そもそも日本にもわずかな間しかいなかったかもしれません。
こういった説を特に強調しているのが、当の小泉一雄本人でした。彼は父と同じ文筆家になり、1931年に発表した著書『父「八雲」を憶う』で、自分の「功績」を語っています。
「ラフカディオ・ハーンが日本に帰化して小泉八雲となったことが日本国家のために有益であったと悦んで下さる方があり、またこれを誇って下さる御仁があるなら、その人々はまず私が生れたことをもそれと同時に悦んで下さらねばならぬ立場に置かれてあるはずです」
「父に対して如何に内助の功あり糟糠の妻だと世間からはいわれる母でも、私を生まなかったら父を日本人として日本に引き留めてしまうことはすこぶる困難であったろうと想います」
「私なる者は如何に馬鹿であろうが意気地なしであろうが、父を日本に断然帰化させたという点において―たとえそれは私の無意識の間にそうなったのであったとしても―私は偉大な功績を有しているといわねばなりますまい。私がただ生れたことそれが既にすこぶる有意義であるのであります」
「放浪性に富んだ父のことです、子がなかったら多分妻を連れて日本を後に世界へ旅から旅へと出たかも知れません」
こういった風に、一雄は3ページにもわたって、父が日本に残った理由を書いていました。一雄の言う通り、『ばけばけ』では子供ができたことで、ヘブンが日本に残ると宣言しています。
実際、ハーンは一雄が生まれて間もない1893年11月23日に、松江時代の親友・西田千太郎(「錦織友一」のモデル)への手紙で、「日本市民」になることを考えていると語っていました。そしてハーンは1896年2月、セツと正式に婚姻関係を結び、日本に帰化して小泉八雲になります。『ばけばけ』でも、そろそろヘブンの名前が変わる場面がやってきそうです。
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『父「八雲」を憶う』(千歳出版)、『ラフカディオ・ハーン 西田千太郎 往復書簡』(八雲会)
