「子どもの趣味でしょ」と言われ。起業したからこそ知った、はたらくことの現実
こうして小学6年生で起業した水野さん。しかし、経営者としての自覚や、はたらくことの責任の重さを実感したのは、中学生になってからでした。進学した地元の公立中学校で、最初の壁にぶつかります。
「週5日学校に通いながら社長業を両立するのは、想像以上に大変で。このままでは会社を潰してしまうかもしれないと感じました」
悩んだ末、水野さんは中学2年生からN中等部にに通います。週3日の通学で、残りの日は会社活動に専念できる環境。学業と経営の両立をあきらめるのではなく、自分なりの最善策を選んだのです。

もちろん、葛藤がなかったわけではありません。体育祭や文化祭で友達が盛り上がる様子を見て、「いいな」と思うこともありましたが、「最近は青春ドラマや映画を見るだけで満足するようになった」と笑います。
こうして経営者としての階段を上る中で、小学生で起業したからこその苦労にも直面しました。取引先との打ち合わせで、相手が明らかに「子ども扱い」のトーンで話しかけてくることがあったのです。
「最初は『子どもが趣味でやっている程度のものだろう』と思われることが多かったですね。でも、入念に準備し、打ち合わせではきちんと伝わる事業のプレゼンをしていくと、だんだん相手の発言に敬語が混じってきたり、社会人として対等に話してもらえたりする機会も増えてきて。そういう瞬間にも喜びを感じます」
起業にはシビアな現実もあります。特許取得や商標登録には多額の費用がかかりましたが、小学生だった水野さんにはその資金はありませんでした。父親から借りた金額は「三桁万円弱くらい」。事業を進める中で新たな特許や商標を出願・取得するたびに、その費用も父親に支払ってもらい、借り入れ額は増えていきます。
「何にいくらかかっているのかは把握していて、マイヤリング®の売り上げから少しずつ返済しています。はたらくことは決して甘くない。お金の重みを知れたので、とてもいい経験になっていると思います」

起業しなければ得られなかった多くの学びと向き合いながらも、水野さんは明確な目標を持ち続けています。
「マイヤリング®を、ピアス、イヤリングに続く第3のアクセサリーにしたい。それが私の一番の目標です」
そしてもう一つ、大きな夢があります。それは「i育(あいいく)事業」というプロジェクトです。
「アイデア(idea)を形にする教育。それを『i育』と名付けました。私のマイヤリング®のように、子どもたちのアイデアを特許や会社という形で残すサポートをしたいです」
かつて自分が周りの大人に背中を押されたように、今度は自分が誰かを支える側に立ちたい。15歳の水野さんは、確かな目標を持って今日も前に進んでいます。
「何がしたいか分からない」人へ
幼少期の病気で“普通でいること”にあこがれ、母のピアスに惹かれ、さまざまな「できない」の中からマイヤリング®を生み出し起業した水野さん。「できないこと」を可能性に変えてきた水野さんに、若者へのメッセージを伺いました。
「若いうちはチャレンジが何度でもできるので、失敗を恐れずに挑戦していいと思うんです。そして、自分一人で完璧にやろうとしなくていい。素直に周りの力を借りることも大切です。自分の力で生きていきたいという気持ちは大切ですが、実際には誰もが周りに支えられて生きていると思うので」

最後に水野さんは、モヤモヤを抱える若者が自分らしく、楽しくはたらくためのアドバイスをこう語ります。
「はたらく以外の視点から、はたらくを考えるといいと思います。『どの仕事をしたいか』よりも、『自分は最終的にどうなりたいのか』『何をしたいのか』を考えてみるんです。私の場合は、ものづくりが好きで、自分のアクセサリーを作りたいという気持ちが出発点でした。それを多くの人に届けたいと思ったから、起業という方法を選びました。自分が好きなことや大切にしたいことを軸に考えれば、どう生きたいか、どうはたらきたいかが自然と見えてくると思います」
※今回お伝えしきれなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中
(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり)

