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「大谷翔平が参考にしていた」今江敏晃の打撃の”間”…原点は憧れのイチローと出会ったWBCだった

「大谷翔平が参考にしていた」今江敏晃の打撃の”間”…原点は憧れのイチローと出会ったWBCだった

「大谷翔平が参考にしていた打者」と聞けば、意外に思う人もいるかもしれない。その人物こそ、元ロッテの名打者・今江敏晃だ。だが今江自身にも、強烈な憧れの存在がいた。イチローである。2006年の第1回WBCで初めて同じチームとなり、“レーザービーム”を受けた瞬間の震えは今でも忘れられないという。イチローから学んだ姿勢は、今江の野球人生を変え、やがて大谷翔平へとつながっていく。

感動で全身が震えた、イチローの「レーザービーム」

届かないだろうと思っていた距離を縮めてくれる。それが、スポーツが秘める大きな力なのだと今江敏晃が痛いほど感じ取ったのが、自らが出場した第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)である。

誉れ高きジャパンのユニフォームに袖を通す。それ以上にスーパースターのイチローと同じチームで戦えることのほうが、今江にとっては喜びだった。

強烈な憧れは、今でも克明に呼び起こせる。

小学5年生だった1995年。1月に関西地方を襲った阪神・淡路大震災からの復興を掲げ、「がんばろうKOBE」をスローガンにパ・リーグ制覇を遂げたオリックスの雄姿は、京都で生まれ育った今江の胸を打った。

彼にとってその憧れは、チームの象徴だったイチローに集約されていたといっていい。周りから「イチローに似てるね」と言ってもらえたことも、夢中になる動機となった。

当時、イチローがCMに起用されていた三ツ矢サイダーのポスターを自室に貼り、イチロー関連の書籍をむさぼるなど滅多にしない読書にまで耽った。

そして、ファッションのアクセントだったDj hondaのキャップを後ろ向きに被って前髪を下ろし、ワンサイズ大きめのパーカーとパンツを合わせてベルトを垂らす。野球の技術よりも、憧れの人に見た目で近づきたいと努める少年がいた。

「『似てる』って言われるのが嬉しかったんで、イチローさんの口元とかより似せるための角度とかも研究しましたよ。下敷きとかサイン入り色紙とかグッズも親に買ってもらって、今でも持ってますからね」

それから11年。2006年のWBCで今江は、初めてイチローと出会った。日本代表メンバーが集結した福岡合宿。最初こそ「本物のイチローさんやぁ」と目で追うことしかできなかったが、シートノックが始まるとすぐにアクションを起こす。

外野との中継プレーでライトのイチローに順番が回ってくると、今江は「レーザービーム」と称される送球を受けたいため、先輩サードの岩村明憲に頭を下げた。

「ガンさん、すいません。イチローさんの送球、僕が受けさせてもらっていいですか?」
 
岩村からの快諾を得て、今江がイチローの正確無比なレーザービームを捕球する。感動で全身が震えていた。

「これや……これがレーザービームや……」

ライトの定位置付近から三塁ベースまで、およそ70メートルの距離で交わした無言の会話によって、今江に勇気が湧く。

「ちゃんと、お話しさせてもらおう」

ところが、実際にイチローと対面した瞬間、「憧れ過ぎて、本当に緊張して何を話したのか覚えていない」というのだ。

イチローに直接聞いた「オンオフの切り替えの真意」

「ミーティングが終わって、部屋に戻る途中のエレベーターホールだったかは曖昧なんですけど、挨拶させてもらって。『よろしくねぇ』みたいに言ってくれたと思います、はい」

その緊張も、代表で同じ時間を過ごしていくうちに親しみと溶け込んでいった。今江にとって衝撃だったのが、イチローのオンとオフの切り替えである。グラウンドの中と外でのギャップがあまりにも違いすぎるのだ。

球場に来る、食事をする、個人でウォーミングを始める。それらの時間と動きは常に決まっている。試合になれば、打席に立つまでにも数多くのルーティンが備わっている。グラウンドでは常に寡黙であり、人を寄せ付けないオーラをその身に宿していた。

それが、プライベートとなると180度、豹変する。いつものクールさは微塵もなく、少年のように無邪気なスーパースターがいた。

引くほどだったと、今江は笑う。

「プロであっても結果を出し続けることって難しいんです。だからグラウンドでのイチローさんは、後悔しないために100%の準備に全精力を注いでいたんだなって。でも、プライベートは……(笑)。初めて食事に行った時のはしゃぎすぎるイチローさんを見て『やっぱ人間なんだ』って、好感を持てました」

WBC期間中、今江は距離を縮めたイチローにどうしても聞きたかったことがあった。

――なんで、オンとオフの振る舞いがあんなに違っているんですか?

イチローは真摯に答えてくれた。

「演じているから。結果を出すために、そうしなければいけないから」

もうひとつ、少年時代のからの思い出も、本人のリアクションが気になっていた。

――僕、イチローさんに「似てる」って、よく言われるんです。

本人が食いつきつつ、投げやりに返された。

「ふざけんな!」

オンとオフ。ふたつの側面を使いこなすイチローらしい反応だった。この憧れのスーパースターと過ごした時間は、今江がキャリアを歩むなかで大きな指標となる。彼もまた「今江敏晃」というプロ野球選手を、前向きに演じられるようになった。

「僕の場合、グラウンドにいる時はトレードマークである笑顔を強調するようになりました。辛くて笑いたくない日とかは、鏡の前でニッて表情を作ってからグラウンドに出ることもありましたね。それって、野球だけじゃなくて人生にも活きることにはなっています」

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