エネルギー管理(マネジメント)は、2026年のF1規則変更の中心となる部分だ。昨年と比べてMGU-Kのパワーが3倍になる一方で、MGU-Hが廃止されバッテリー容量は変更しないという決定は、すべてのチームに非常に複雑な課題を突きつけている。
無策に走ればすぐにバッテリーに蓄えられたエネルギーを使い果たしてしまうため、その限られたエネルギーをどこでどのように使うのが最適なのかを詳細に分析する必要がある。
また、オーストラリアGPの舞台であるアルバートパーク・サーキットのようなサーキットでは、エネルギーを回生できる箇所が少なく、適切なマネジメントができなければ、ストレートでエネルギー切れを起こすリスクがある。
FIAは、一部のコースではドライバーがバッテリーの充電を最大化するためにアクセルから足を早めに離す(リフト&コースト)などして全速力での加速を避けるリスクがあることを認識していた。
状況によっては、加速を続けてエネルギーを使い果たすよりも、ストレートの終わりで数km/h減速してエネルギーを再充電する方が有利なケースもある。ストレートエンドでは、純粋なパワーよりも空気抵抗の問題の方が大きいからだ。
エネルギーマネジメントの考え方はシンプルだ。タイムロスが限られている区間で速度を多少犠牲にし、次のセクションで使用するエネルギーを回生する。この妥協策を慎重に検討すれば、ラップタイムの面でアドバンテージになりうる。
問題は、ドライバーが全力を尽くすべきセッションである予選において、こうした極端な戦術が継続的に繰り返されるリスクがあった点だ。
このため数ヵ月前に、レギュレーションに新たな条項が追加された。これによりFIAは、予選ラップにおける回生可能エネルギー量の上限を引き下げることが可能となった。ドライバーが予選のアタックラップでも早めにアクセルオフし、コースティングすることを抑制する狙いだ。
FIAはすでにこの条項を、エネルギー管理の面で最も要求の厳しいサーキットの一つである開幕戦オーストラリアGPで発動した。アルバートパークはラップの約70%でアクセルを全開にし、ブレーキング時間も短い(つまりエネルギーを使う箇所が多く、逆にエネルギーを回生できるところが少ない)サーキットなのだ。
レースにおいては、1周あたりのエネルギー回生量の最大値が8.5MJから8MJに引き下げられた。一方、フリー走行では規定で許容される最大値が維持され、変更はない。
規定では『FIAが、ブレーキングおよびパーシャル充電フェーズに起因する1周あたりの最大回生可能エネルギーが8MJを超えないと判断した競技において、この制限は8MJまで引き下げられる可能性がある』と定められている。
しかし予選では、たとえアタックラップであっても、過度なエネルギー回生テクニックを防ぐため、この制限は8.5MJから7MJへとさらに引き下げられる。
『この制限値は、スプリント予選および予選セッションにおいて、FIAが上記制限値(8.5MJ)を遵守するために必要なエネルギー回生戦略が過剰であると判断した場合、5MJを下回らない範囲でさらに引き下げられることがある』という条項が、規則に追加されているのだ。
これによって、ストレートエンドでアクセルを全開にしたままMGU-Kがエネルギー回生を行なうことで減速する状態となる”スーパークリッピング”が減るだけでなく、ドライバーがエネルギー回生のために積極的にリフト&コーストを行なう理由も減ることを意味する。
実際、現行規定でスーパークリッピングではMGU-Kの全力である350kWではなく、最大250kWまでにエネルギー回生が制限されている。一方、リフト&コーストでは350kWで回生できる。したがって、特に急ブレーキ前の数メートルといったタイム的にロスが少ない状況では、一部のドライバーが予選アタック中にリフト&コーストを行なう可能性があった。
ドライバーが1周あたり8.5MJのエネルギー回生ができるのは、オーバーテイクモード時、フリー走行時、およびアウトラップ時のみだ。フリー走行と予選では、ドライバーがフル充電のバッテリーで走り出せるようにするためアウトラップでの制限が解除されるわけだが、レースではピットストップ後も1周あたり8MJの制限が適用される。
またFIAはストレートでの急激な減速を防ぐため、出力の減少を最大50kW/sにするよう義務付けている。ただしこれには例外があり、アルバートパークのターン11から13にかけて、つまりラップ終盤においてエネルギーを温存し、より有用な区間で活用するため、チームが150kWを超える出力削減を選択することができると表明した。
予選に向けて、チームの悩みのタネとなる問題はまだある。エネルギーマネジメントがより重要となったことで、トラフィックが問題となる可能性が増しているのだ。
ハースの小松礼雄代表は、トラフィックについて次のように語った。
「ラップのスタート時にバッテリーを充電するためには、一部のポイントでは速度を落とさなければならないですが、一部のストレートではアクセルを全開にしなければなりません。しかし、全速力で走るべきそのストレートで、誰かを先行させなければならないとしたら、それは最悪ですよね?」
「だから予選では大惨事になる可能性が非常に高いんです。だからこそフリー走行が重要で、その状況をできるだけシミュレートする必要があります。Q1に臨んで、そこで初めて予選に直面するなんてありえない!」
「最適な妥協点はどこか、本当に重要です。大きなチャレンジになるでしょう」

