
スペースデブリとは、宇宙空間では寿命を終えた人工衛星が残す破片などの「宇宙ごみ」を指します。
実は人類史上、地球に再突入してきたスペースデブリに当たったことが記録されている人物が1人だけいます。
それはアメリカ在住の女性、ロッティ・ウィリアムズ(Lottie Williams)さんです。
彼女がスペースデブリに当たったのは、1997年1月22日のことでした。
目次
- 約13cmの破片が肩にぶつかる
- 重さ250キロのスペースデブリも落下していた
約13cmの破片が肩にぶつかる
その朝、ロッティさんは友人たちと一緒に、米オクラホマ州タルサ郊外のターレイにある公園を歩いていました。
公園の周回路を歩きながら会話をしていると、彼女の目に空の明るい閃光が飛び込んできました。
光は「流れ星」のように強く輝き、南の方角へと尾を引いて消えていったといいます。
そして数分後、彼女の肩に何かが「かすめるように」当たり、跳ね返って芝生の中へ転がっていきました。
当たったものは長さ12.7センチの黒く焦げたグラスファイバー片でした。
彼女は怪我をしませんでした。
当時の彼女の感覚では、その破片は空のソーダ缶ほどの軽さだったといいます。
実際に報道などで伝えられている重さは約16グラムで、確かに軽量です。
この軽さが、彼女を救った最大の理由でした。
【ロッティさんと肩に当たったスペースデブリの画像がこちら】
宇宙から落ちてきた物体と聞くと、巨大な鉄の塊が凄まじい速度で落下してくる想像をしてしまいます。
しかし大気圏への再突入で多くの破片は燃えたり砕けたりし、残ったとしても空気抵抗で大きく減速します。
彼女に当たった破片も、速い速度で地球に突入した後、地上に届く頃には勢いがかなり弱まっていたと考えられます。
ただし、ここで安心してはいけません。
彼女に当たったのは「大量に落ちてきた破片のうちの1つ」にすぎなかったからです。
重さ250キロのスペースデブリも落下していた
ロッティさんに当たった物体の正体は、アメリカ製デルタIIロケットの第2段(Aerojet AJ10-118K)だったと見られています。
この第2段は1996年4月24日、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から、アメリカ空軍の人工衛星を打ち上げた後、軌道上に残されていました。
その後、軌道が徐々に低下する「減衰軌道」の状態になり、最終的に制御されない形で地球大気に再突入。
そこで機体は完全には燃え尽きず、破片がオクラホマ州とテキサス州にまたがって散乱しました。
このとき最も大きかった破片は、重さ250キログラムのタンク部品だったと言います。
このタンクはテキサス州ジョージタウン近郊の農家からわずか50メートルという近距離に落下しました。
しかし、もしロッティさんに当たったのが16グラムの破片ではなく、あるいはその250キログラム級の部材だったらどうなっていたでしょうか。
偶然という言葉で片づけるには、条件が危うすぎます。
さらに後年の調査で、材料の状態から、破片は少なくとも1200℃以上に加熱されていたことが示唆されています。
宇宙利用が拡大するほど、こうした「制御されない再突入」は社会にとって現実的な課題になります。
衛星やロケットが増えれば、軌道上の物体同士の衝突や破片の増殖が起こりやすくなり、宇宙空間の安全性そのものが揺らぐからです。
そして、軌道の安全が揺らげば、通信、測位(GPS)、気象観測といったインフラにも波及します。
ロッティさんの肩に当たった12.7センチの破片は、スペースデブリ問題が「宇宙だけの話では終わらない」ことを、分かりやすく示しているのです。
参考文献
Only One Person Is Known To Have Been Hit By Space Junk – But For How Long?
https://www.iflscience.com/only-one-person-is-known-to-have-been-hit-by-space-junk-but-for-how-long-82764
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

