「鹿又さん僕のシャフト選び、助けてもらえませんか?」ゴルフ歴45年のキャリアでシングル級の腕前を持つ文壇のボス・大沢在昌さんが近年飛距離に悩んでいるという。
その話をカノマタが聞きつけ、ドライバーのシャフトを中心にフィッティングが行われた。
飛ばす力はまだ十分ある
それを生かせるシャフトとは

「そんな夢みたいな話信じていいの?」(大沢)
大沢(以下大) 今日はよろしくお願いします。いつも「ギア猿」見てますよ。
鹿又(以下鹿) ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!さっそくですが大沢先生、いまいちばんのお悩みは何ですか?
大 14本全部見てほしいところですが、まずはドライバーです。とくにシャフトには長年悩んでいて、どれを試してもしっくりこない。そのせいか飛距離がどんどん落ちていて、ひと頃230Yは飛んでいたのがいまでは210Y飛べばいいほう。これでは380Yくらいのパー4がどうやっても2つじゃ乗りません。230Yとは言わないから、もう少し飛距離を戻せないかなと。
鹿 さっきスイングを拝見しましたがまだまだ十分振れていて、ヘッドスピードも出ています。これなら10~20Y戻すのは意外とカンタン。230Yに戻すのも十分可能かもしれませんよ。いまハンディキャップはおいくつですか?
大 13です。30歳で初めてハンデを取ったときの12より、落ちちゃった。
鹿 練習にも週1のペースで行っていらっしゃるとのことですし、スイングのレベルは高いので、飛距離さえ戻ればハンデも戻せますよ。いま69歳なら70歳でシングルを目指しましょう!
大 本当ですか⁉そんなこと言われたら、年甲斐もなく夢見ちゃいますよ。どんな魔法を使えば20Yも伸ばせるんですか?
鹿 いまの大沢先生のスイングは、球を「つかまえない」動きが強く出ています。ドローヒッターということもあり、ヒッカケを嫌がっている感じです。
大 そうですね。手が勝ちすぎるとヒッカケるけど、それだとスコアにならないのでヒッカケないようにスイングしているかもしれません。
鹿 僕はそこがキモだと思っています。大沢先生は球をとらえるのがお上手で、ゆったり振り抜くというよりはインパクトに集中してボールをヒットするタイプ。そのインパクトのヒット感やフェースを開閉する動きで力を出していきたいのですが、ヒッカケを嫌がるあまり、そこで力を出さないように制限して振っているんです。いわばご自分の長所を消してスイングしている形なので、すごくもったいない
です。

大 思い当たるフシはありますね……。それがシャフトで直せるんですか?
鹿 シャフトで直すというよりは、大沢先生自身が力を出しやすい動きをしたときにいい球が出てくれるシャフトを選ぶことで、いま無意識にかけてしまっているスイングのリミッターを外すイメージです。思い切って叩きに行っても左に行かないクラブなら、本来持っている力を最大限発揮できる。これで20Yくらいはカンタンに戻ります。
大 なるほど。期待がふくらんできました。
鹿 大沢先生は、いまどきの「軽くてやさしい」クラブは合いにくいタイプなのです。重くてつかまりすぎないクラブのほうが、結果が出る。
大 そこは、重いクラブなんて振れない、クラブはやさしいほうが飛ぶはず、という先入観があったかもしれませんね。
ヒッカケを嫌がって曲げないように加減して打っている

ヒッカケを嫌がるあまり、球をつかまえないように加減して打つクセがついており、それが本来の力を制限してしまっている。
「叩いたら曲がる」先入観を取り払えば飛距離は戻る!

鹿 では打席に戻っていろいろ試してみましょう。いまお使いのドライバーを計測させてもらいましたが、ヘッドはピンの「G440MAX」。シャフトは50gくらいの中調子のものが入っていて総重量は294g。重さは足りていそうです。
大 ちょっと前までタイトリストの「GT1」を使っていたのですが、最近コレに替えました。
鹿 いい判断だったと思います。「GT1」もいいヘッドですが、多分そのままでは大沢先生には軽すぎて、球をつかまえないように振る動きが強調されてしまう可能性が高いです。もしかするといまもまだその影響が残っているかもしれません。試しにコレを打ってみてもらえませんか?
大 軽いですね!でもそんなに飛んでない。
鹿 弾道データを見ても、クラブを軽くしたのにボール初速が上がっていません。軽さに合わせて加減してしまっているんです。では今度はこっちを。
大 こっちはずいぶん重くて硬い。ちょっとしんどいかな……。
鹿 ところが見てください。ボール初速はこっちのほうが出ているんです。大沢先生は、多少「重いな」「硬いな」と感じて振ったほうが、それに合わせて自分でがんばって力を出すタイプです。まだその力もある。こういう重めのクラブの「重さ」を、ボールにぶつけてやればいいんだという感覚を取り戻すことが、飛距離アップのカギです。
大 「年寄りの冷や水」でいいってことですか?
鹿 ご自分ではそう感じるのかもしれませんが、それが大沢先生の適正スペックなんです。重め、硬めにすると球は低めになりますが、それはロフトやシャフトの特性などでカバーできますし、そこを選ぶのが僕らの仕事です。あとはスイングのイメージや感覚を補正して、「もっと右手を使ってぶっ叩いていいんだ」ということを思い出しましょう。
大 たしかに昔はその感覚があったけれど、いまはヒッカケが怖くてやらなくなってしまっているかもしれません。「叩くと曲がる」という思い込みがあるので「思い切って叩いていい」っていうのは目から鱗が落ちる思いです。でもまだ左に行く感じが消えないな。
鹿 はい。球をつかまえる動きを取り戻しつつありますが、つかまえない動きが染みついているせいで打ち出し方向が左すぎるんです。ドローヒッターの大沢先生は本来もっと打ち出し方向を右にしないとダメ。思い切って右に出して、フック気味の球を打つ感覚にしていきましょう。
大 ちょっとまだ怖いけど、右に出すとたしかにつかまったいい球が出ますね。
鹿 それでいいんです!それなら多少つかまりすぎても左のラフ程度じゃないですか。怖がらずにどんどんつかまえて打ってください。やっぱり大沢先生は、少し重めで硬めのシャフトが合いそうです。今日打っていただいた中では、三菱ケミカル「ヴァンキッシュW」の4SRがよかったですが、これなら4SでもOKです。フジクラの「スピーダーNXゴールド」の40SRならもう少し硬く感じるはずなので、叩く感じに慣れてきたら合いそう。ワッグルオリジナル「WAVE」は、先が動くフィーリングに違和感があるかもしれませんが、そのぶん補正能力があるのでハマれば飛ぶはずです。
大 こんなに硬くていいし、こんなに叩いていいのか。やさしいクラブで曲げないように打つという考え方は、方向性が間違っていたんですね。
鹿 はい。大沢先生はその感覚をお持ちなので、あとはそれを思い出せば、アイアンやほかのクラブの飛距離も伸びてくるはずです!
鋭い感性をもっと生かしてスイングしてほしい

大沢さんは球をつかまえる感覚や、クラブの特徴を感じる鋭い感性がある、と鹿又。それを生かせばさらに飛ぶ
右に打ち出す感覚を思い出してください!

球をつかまえてドローで飛ばすには、ボールを右方向に打ち出す必要がある。その感覚を思い出すことも大事
もっと右手で球をつかまえることが飛ばしのカギ

ヒッカケを怖れて使うことをやめていた右手を積極的に使うこと。それで左に行かないクラブを選ぶことがポイント。

「もっと飛ばして70歳でシングル復活しましょう!」(鹿又)
「クラブの選び方だけでなくスイング面でも劇的な意識改革になった」と大満足の大沢さん。

