放任主義の家庭に育った結果、妻は
「ご主人が言っている事に対しては、どう思われていますか?」
と私が尋ねると、加奈子さんは、
「夫の言う事が正しいのは分かっています。でも、私も心配だし、出来る事はやってあげたいんです。多分それは私の育てられ方が関係していると思うんですけど……」
と、自分から生い立ちについて話し始めてくれました。
「親はなんでも自由にさせてくれました。でも、大人になって考えると、放任だったんじゃないかって……」
両親と兄の4人家族。両親は共働き。母は夜は家にいましたが、いつも家事に追われていたとの事。
「夕食の時、両親共にいなかった事もありました。食事はお金をくれて、『これで何か買って食べなさい』って言われて。兄は兄で好きな物を買って来て食べていたので、一緒に食べる事はなかったです」
良い成績をとって、親に見せても「そう」の一言で終わったそうです。
「小学校の時に読書感想文で賞を取ったんです。嬉しくて母に話したのですが、その時も『そう』の一言で、喜んでもらえなくて。それは悲しかったな」
高校卒業後はビジネススクールに入学。就職先はなかなか見つからず、派遣登録。派遣で転々としているうちに、20代後半で結婚したいと思うようになり、その頃に夫と出会ったとの事でした。結婚も出産もすごく嬉しかったそうです。
「子どもには私と同じような思いは絶対させない、って思いました。私みたいな空っぽな人間にしたくないので」
心理テスト結果からも、自己評価の低さ、両親への拒否感が認められましたが、距離をおけている事で深刻ではありませんでした。
良かったのは息子の存在が支えとなっている事。家族に対する感情も極めて肯定的でした。
ただ、息子に対して過度な関心を向けており、自身に対する安心感のなさが、息子への過干渉につながっている事も分かりました。
自立心旺盛な夫
明彦さんは東京出身、姉がおり、父親はサラリーマン、母は専業主婦。
「なんでも好きにさせてもらって育ちました」
小さい頃は家族で出かける事も多かったけれど、明彦さん自身の希望で中学受験をする事になり、小4からは勉強で忙しい日々。
「学校も自分で選びました。親は協力してくれたけど、特に口出しはされませんでした」
頑張ったかいがあり、第一志望の有名私立中学に合格。そのままエスカレーターで大学まで進学したとの事でした。
「親にどんなにうるさく言われても勉強なんかしなかったと思います。自分で決めたから頑張ったのであって。私は息子にも自分で自分の事を決める子になって欲しいんです。だから妻の過干渉が気になって。あれじゃあ、自分の意思なんて持てないまま大人になってしまいます」
心理テスト結果からも、自分に対する自信が強く、意志が強い事も認められました。子どもへの愛情はしっかりとあり、妻にも愛情はありますが、不安を抱いている事が認められました。
文/山脇由貴子

