昨年デビュー25周年を迎えた歌手の愛内里菜。しかしデビューから10年目の2010年に、一度歌手活動を引退している。引退から復帰まで、彼女はどう自分自身と向き合ってきたのか。今年2月21日公開の映画『どうしようもない10人』で、約22年ぶりに自身の曲が映画主題歌に抜擢された心境についても聞いた。
デビューから10年目、突然の歌手活動引退
デビューから10年目、ちょうど30歳になる年に、愛内は一度歌手活動を引退する。引退した心境について彼女はこう語る。
「幼少期のころから甲状腺の持病があって、その症状が悪化してきてしまったことが原因です。症状が悪化した背景には、当時メンタル的に弱ってしまっていたことも関係していたんじゃないかと今になって思います。
私はもともとそんなに長く歌手活動をするつもりはなかったんです。若いうちにデビューして活躍して、華があるうちに引退したいと思っていたので、25歳を迎えてからは“これからの人生どうしていこう”と漠然と悩んでいました。
こういったモヤモヤした気持ちが自然と身体にも影響してしまったのか、レコーディング中に声が出なかったり、納得のいくクオリティの歌声にならなかったりといったことが多くなっていきました。
10代の時から歌手しかしてこなかった自分を振り返り、“自分が他になにかやりたいことってないのかな”と、歌手以外の自分に興味が出たことで、30歳という節目に引退を決めました」
“活動休止”ではなく“引退”に踏み切ったのには、彼女なりの理由があった。
「もちろん休むという選択肢も考えましたが、私の性格上、“休んでいる間に自分の居場所がなくなるんじゃないか”とか、余計なことを気にして考えちゃうだろうなと思ったので、ここは覚悟を決めて歌手からは離れる決断をしなきゃいけないと感じていました。
歌手としての自分をスパッといったん切り離した時に、何が残るんだろうという興味の方が強かったので、当時は歌手に戻るつもりもありませんでした。新たに見つけた道を進んでいくことも、自分の人生にとっては大事だと思っていたのです」
「引退後は音楽番組も見られなかったし、音楽も聞けなかった」
引退後はその余韻に浸る間もなく、病気を患ってしまった愛犬の介護に奔走していたという。
「歌手としての活動を終える、最後のファンクラブイベントの日がちょうど愛犬の手術の日でした。その日は親に愛犬を預けていたんですが、イベントから帰ってきたら手術が失敗したという連絡があって……。愛犬は筋肉がどんどん弱っていって、歩くこともできなくなっていってしまったんです。
そんな状況で私はいてもたってもいられなくなって、すぐに動物の資格が取得できる専門学校に入学して、愛犬のためにできることを全力で学びました。
本当に日々忙しくて、引退のことを考える間もなかったです。いま思うと愛犬の存在が自然と歌手活動から自分を遠ざけてくれるための“導き”だったのかもしれません」
引退後の生活について愛内は、自然と“避けていたこと”があったと語る。
「引退してからは、音楽番組は観られなかったですし、音楽も聴きたくないという状況でした。
音楽に関するものに触れてしまうと、あれこれ自分の中で音楽に対する思いがあふれてきてしまうのが怖くて、なるべくテレビを観たり、音楽を聴いたりすることは避けて生活していました」
そして引退から5年後の2015年、愛内は再び歌手として表舞台に舞い戻る。どういった経緯で復帰に至ったのか。
「再び歌い始めるきっかけとなったのが『THEカラオケ☆バトル』(テレビ東京)という番組から出演オファーをいただいたことでした。
その番組で、自分の曲ではなく、他の歌手の方の曲を歌ったのですが、それがすごく気楽で楽しくて。
自分の曲を歌うことは重荷でしたが、曲のカバーなら歌いたいなと感じて、そこからファンの方とも交流したいという思いから、年に2回だけ、カバー曲を披露するディナーショーを開催することにしたんです」
このディナーショーが彼女の運命を変えることになった。
「引退の時にリリースした最後のアルバムを手がけてくださった音楽プロデューサーの石井健太郎さんが、私の大阪のディナーショーに来てくれたんです。
実はそれまで実際にお会いしたことはなかったのですが、ディナーショーの時にはじめてお顔を合わせて、その時に石井さんが“愛内さんのためなら、また僕は曲書きたいと思っているんで”とお声がけしてくださり、たくさんのデモテープを渡してくださいました。
続けて石井さんに、“いつか歌いたいと思う日が来たら、このデモテープの中から曲を選んでくれたらいいから”と言われて、そこから徐々にもう一度自身の音楽と向き合うようになっていったんです」

