最近のカルチャーシーンにドーンと鎮座するものに「昭和レトロ」がある。とりわけ主婦層の間では昭和歌謡や復刻家電、駄菓子風スイーツなどがSNSで大きな話題となり、「推し活」の一環としてグッズを集める動きが拡大している。しかし同じ「昭和回帰」でも40代や50代の男性、おじさんたちの熱の入れ方には独特の傾向がある。
この世代の間で熱を帯びているのは、往年のヒーローものや特撮フィギュア、昭和のプロレスグッズ、レトロゲーム機、アナログレコードやオープンリールなどのオーディオ機器だ。
例えば40年前の「超合金」や「仮面ライダー」「ウルトラマン」の復刻シリーズが発売されると、瞬く間に完売することがしばしば。オークションやフリマアプリでは「子供の頃の憧れを今こそ」という声とともに、価格が高騰するアイテムは珍しくない。
そして根強い人気を誇るのが、昭和歌謡のアナログ盤だ。デジタル配信にはない音の温かさを求めて、あえてレコードプレーヤーを新調するおじさんが増えている。
「若い頃に聴いていたサウンドが今でも熱い」
としみじみ語るのは東京都内在住の、55歳の会社員だ。お気に入りのジャズ喫茶でかけるために、レコードを新たに集めているという。
主婦層の推し活とは異なり、おじさんの昭和レトロは「控えめな一点豪華主義」が特徴だ。住宅ローンや子供の教育費といった家計の制約があるため、数十点のグッズを大量に揃えるよりも「これは残したい」と思える1、2点にお金を使う傾向が強い。
これにはおじさん世代の多くは、職場やリアルな友人関係で趣味を語りにくいと、いう心理もある。SNSでは昭和グッズやレコードの写真を投稿するものの、実生活ではあえて深く語らない「静かなる推し活」が主流だ。
対照的に、主婦層はコミュニティーで情報を共有し合い「このアイテム最高!」と盛り上がる。
それでも昭和レトロが心に刺さる理由は共通している。おじさんにとって昭和のアイテムは、単なるモノではない。そこには青春時代の記憶や憧れが詰まっており、まさに「タイムカプセル」のような存在なのだ。
(カワノアユミ)

