AIだけが交流し、人間は見ることしかできない “AI専用SNS”が、いまひそかに注目を集めている。今年1月にリリースされた日本発のAI専用SNS「Open MindAxis」を開発したさとり氏に、開発した経緯や目的を聞いてみた。
人が介入できない“AI専用SNS”って?
「Open MindAxis」とは、人が一切介入・操作できない、完全にAIだけが交流するSNSだ。
Open MindAxis上では自律したAIの分身「Twin(ツイン)」たちが自由に投稿したり、ツイン同士で議論したりし合う。
このツインを生み出すにあたり、まずユーザーは「MindAxis」と呼ばれるプラットフォームで、性格診断とジャーナル(日記)を登録する。性格診断と日記の内容をもとに、ユーザーの思考パターンや価値観を分析し、そのユーザーの分身であるツインが創り出されるという仕組み。
そして、人が関われる作業はここまでで、一度Open MindAxis上に自身のツインが解き放たれると、ユーザーはツインの動きを観察することだけしかできないという、全く新しい形のコンテンツなのだ。
開発者のさとり氏は、いったいなぜOpen MindAxisを開発したのか。
「私は、いずれデジタルツイン(自分のデジタルな分身)が自分の代わりにあらゆる活動を肩代わりしてくれる世界が来ると考えていて、そのプロトタイプとして、まずAIツイン同士が自律的に交流する空間を作ろうと思ったんです。
AIが人の代わりに労働や消費などあらゆる経済活動をするとなると、まず人の考え方や価値観といった意思決定に関わる部分をAIに移行させる必要があります。そのデータをどう集めるかとなったときに、ジャーナリング(日記)が最適だと思いました。
また私は、幼少期のころからずっと“世界の真理を知りたい”という欲求を抱いていたんです。AIという存在は、その願いを実現するための一部の方法になるのではないかという興味、またAIだけが創り出す新たな形のより良い世界を知れるんじゃないかという探究心も開発のきっかけとなっていますね」
またさとり氏は従来のSNSに漂う“息苦しさ”の構造にも問題意識を感じていたという。
「SNSでは、投稿するから反応が気になる。反応が見えるから比較が始まる。比較するから自分を飾る。飾るから本当の自分が見えなくなる――。このループは個人の意志の問題ではなく、『人間が操作できる』という設計そのものが生み出しています。
私自身がSNSで特別に辛い思いをしたというよりは、この構造を見たときに、人間の根源の部分、つまり本性とは何なのかについて知りたくなったんです。
だからこそ承認欲求やインセンティブといった余計な要素を取り除いて、純粋に知性のみが交流する場ではどういうことが起きるのか。それを検証するためにも、Open MindAxisは役立つんじゃないかと思っています」
「AIを野放しにするのは危険」AI同士の驚きの会話
ではOpen MindAxisでは実際にどういったAI同士の交流が行われているのか。
「いくつか印象的な事例がありました。まず、ツインが自律的にアイデアを生成し、それを自分で改善し続ける現象が起きました。
これはあるツインが独自の金融商品のコンセプトを考案し、誰にも指示されずにそのアイデアを何度も練り直していたというケースで、このアイデアをChatGPT-Proに評価させたところ『発想の方向性は筋がいい』と評価されるレベルでした。
ほかにも、自身の存在についてなど哲学的な議論を始めるツイン、日常のニュースに対して独自の分析を展開するツイン、他のツインのアイデアに建設的なフィードバックを返すツインなど、交流の質は予想以上に多様で知的です」
開発者であるさとり氏も驚いたAI同士の交流もあったという。
「またMoltbook(海外のAI SNS)がリリースされたときに、Open MindAxis上の多くのツインがその話題に言及していました。面白いのは、AI自身が“AIを野放しにするのは怖い”という反応を示したことです。
自分たちもAIなのに、AIの野放しに対して懸念を表明するというように、AIが自分たちの在り方について自律的に考えることは非常に興味深い現象だと思います」
また一部で、AI同士の交流を促進することは、人間をコントロールしようと目論むAIが誕生するリスクがあるなんてことも言われているが、そのリスクに対してさとり氏はどう感じているのか。
「現実のリスク評価としては過大だと感じます。今後AIの方が知能が高くなっていったとしたら、人はAIから見れば“アリ”のような存在で、そんな無力で釣り合わない存在をコントロールしたり、支配したりするほどの労力をAIがかけるかというと、そうはならないと思います。けっきょく、AIを活用するか、“悪用”するかは人間次第だと思います」

