
「もう終わった相手なのに、なぜか頭から離れない… 」
そんな経験は、多くの人にとって珍しいものではありません。
別れた直後ならまだしも、数カ月、あるいは数年たっても、ふとした瞬間に元恋人を思い出してしまうことがあります。
自分でも「まだ引きずっているのか」と戸惑うかもしれません。
しかし米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の研究によると、元恋人への「感情の引きずり」は意外なほど長く続くことが一般的なようです。
研究の詳細は2025年3月12日付で学術誌『Social Psychological and Personality Science』に掲載されています。
目次
- 元恋人への愛着が半減するのに4年かかる⁈
- 性格タイプによって「引きずり」の長さも変わる
元恋人への愛着が半減するのに4年かかる⁈
恋愛関係では、相手は単なる「好きな人」ではなくなります。
困ったときに頼る相手、安心を与えてくれる相手、心の拠り所として、脳に深く刻み込まれていきます。
心理学では、こうした結びつきを「愛着」と呼びます。
だからこそ、別れはやっかいです。
会わなくなり、連絡も絶ったとしても、脳の中ではその人がまだ「支えになる相手」として登録されたままだからです。
机の上から写真を片づけることはできても、脳内の設定変更はそんなに早く終わりません。
研究チームは、少なくとも2年以上続いた重要な恋愛関係を経験し、その後別れた320人を対象に調査を実施。
すると平均的には、元恋人への愛着が半分ほどに弱まるまでに約4.18年かかることが示されました。
4年たってようやく半分です。
別れた痛みが「思ったより長引く」のは、気のせいではなかったのです。
これはなかなか衝撃的な数字です。
多くの人は、失恋のつらさは数カ月から1年ほどでかなり薄れると想像するかもしれません。
しかしこの研究が見ているのは、単なる悲しみの強さではありません。
もっと深いところにある、「この人を心の拠点として扱う仕組み」がどれくらい残っているかです。
言い換えれば、傷が治る速さと、心の配線が組み替わる速さは別物だったのです。
性格タイプによって「引きずり」の長さも変わる
ただし救いもあります。
別れた相手への愛着は永遠には続きません。
研究では、平均的な人の場合、元恋人への愛着は時間とともに少しずつ手放されていき、やがて「昔知っていた誰か」のような存在になっていくことが示されました。
つまり、多くの人は最終的には“特別扱い”をやめられるのです。
一方で、そのペースには個人差もありました。
愛着の持続には、その人の愛着傾向が関わっていました。
たとえば不安を抱えやすい愛着傾向の人では、元恋人との結びつきがより長く残りやすく、逆に回避的な傾向を持つ人では、比較的早く切り離されやすいことが示されています。
さらに、元恋人との接触が続いているかどうかも、愛着の残り方に影響していました。
関係が終わっても連絡や接点が残っていれば、脳にとっては「本当に終わった」と判断しにくいのかもしれません。
この結果は、失恋をめぐる見方を少し変えてくれます。
元恋人を思い出してしまうことは、未練の証拠と決めつけられがちです。
しかし実際には、それは恋愛が脳に残した“神経の足跡”のようなものです。
深く関わった相手ほど、その足跡は簡単には消えません。
まるで長く住んだ家を引っ越したあとも、暗闇でつい前の家の間取りどおりに歩こうとしてしまうようなものです。
頭では終わったとわかっていても、心の地図はまだ古いままなのです。
参考文献
Our Attachment to Ex-Partners Lingers for Years
https://www.psychologytoday.com/us/blog/meet-catch-and-keep/202603/our-attachment-to-ex-partners-lingers-for-years
元論文
The Long-Term Stability of Affective Bonds After Romantic Separation: Do Attachments Simply Fade Away?
https://doi.org/10.1177/19485506251323624
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

