
もし、6000年前に絶滅したはずの動物が、いまも森のどこかで生きていたら?
そんな驚きの出来事が実際に起きたようです。
オーストラリア博物館(Australian Museum)はこのほど、長い間化石でしか知られていなかった2種の有袋(ゆうたい)類が、ニューギニア島の奥深い熱帯雨林で生きていることを確認したと発表しました。
発見されたのは、
「ピグミー・ロングフィンガード・ポッサム(Dactylonax kambuayai)」
「リングテイル・グライダー(Tous ayamaruensis)」
という2種です。
これらの動物は、少なくとも6000年前に絶滅したと考えられていた哺乳類でした。
研究の詳細は2026年3月6日付で学術誌『Records of the Australian Museum』に掲載されています。
目次
- 消えたはずの動物を追い続けた27年
- 「奇妙な指」と「滑空する」哺乳類
消えたはずの動物を追い続けた27年
今回の発見は、偶然の出来事ではありませんでした。
実は、この動物たちの存在を示す最初の手がかりは1999年に現れていました。
しかしその時点では、断片的な情報しかなく、確実な証拠とは言えませんでした。
研究を率いたのは、メルボルン持続可能社会研究所のティム・フラナリー教授です。
彼は長年にわたり、ニューギニアの動物相を研究してきました。
チームは、現地の研究者や先住民コミュニティと協力しながら、写真資料や標本、化石などの情報を積み重ねていきました。
そして27年にわたる調査の末、2種の有袋類が現在も生きていることが確認したのです。
【絶滅したと思われていたリングテイル・グライダーの生存個体がこちら】
これらの動物は、研究者の間で「ラザロ分類群(Lazarus taxa)」と呼ばれる存在です。
これは化石記録から長期間姿を消したため絶滅したと思われていたものの、後になって生存が確認される生物を指します。
フラナリー教授は次のように語っています。
「最近絶滅したと考えられていた種でも、再発見されれば非常に特別な出来事です。しかし、数千年前に絶滅したと考えられていた2種が見つかったことは驚くべきことです」
「奇妙な指」と「滑空する」哺乳類
発見された2種は、どちらも非常に特徴的な姿をしています。
まずピグミー・ロングフィンガード・ポッサムは、縞模様を持つ小型の有袋類です。
この動物の最大の特徴は、片手につき1本の指が他の指の2倍ほど長いことです。
研究者によると、この長い指は腐った木の中に潜む昆虫の幼虫などを掘り出して食べるための適応と考えられています。
もう一つのリングテイル・グライダーは、オーストラリアに生息するオオフクロモモンガ(Petauroides)の近縁種です。
これらの動物は、前脚と後脚の間にある皮膜を使って木から木へ滑空します。
今回発見された種はそれより小型で、毛のない耳と枝をつかむことができる尾を持っています。
このグライダーは、生涯にわたりペアを形成し、1年に1匹だけ子どもを育てるという生活史を持っています。
また、森林の高い木にできる樹洞(じゅどう)を巣にするため、森林伐採の影響を強く受けやすいと考えられています。
興味深いことに、リングテイル・グライダーは地域の先住民にとって神聖な動物とされてきました。
チームは、現地民族であるTambrauw族とMaybrat族の長老たちと協力して調査を進め、彼らの知識が動物の発見に大きく貢献したといいます。
まだ見ぬ「絶滅動物」が森にいるかもしれない
絶滅とは、私たちが「もう存在しない」と判断した状態のことです。
しかし今回の発見は、その判断が必ずしも最終的なものではないことを示しています。
地球には、まだ人の目に触れていない生物が存在するかもしれません。
特にニューギニアのような広大な熱帯雨林では、その可能性は決して小さくないでしょう。
今回の研究は、未知の生物多様性を見つけるためには、自然環境の保護と先住民の知識が不可欠であることも示しています。
もしかすると、世界の森には「絶滅したはずの動物」がまだ静かに暮らしているのかもしれません。
参考文献
Marsupials found alive after 6,000 years of extinction
https://australian.museum/about/organisation/media-centre/marsupials-rediscovered-vogelkop-papua/
Scientists find 2 marsupial species, thought to have gone extinct 6,000 years ago, living in the forests of New Guinea
https://www.livescience.com/animals/land-mammals/scientists-find-2-marsupial-species-thought-to-have-gone-extinct-6-000-years-ago-living-in-the-forests-of-new-guinea
元論文
A new genus of hemibelideine possum (Marsupialia: Pseudocheiridae) from New Guinea and Australia, including a Lazarus taxon from the Vogelkop Peninsula
https://doi.org/10.3853/j.2201-4349.78.2026.3004
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

