2026年のF1開幕戦オーストラリアGPは、メルセデスが1-2フィニッシュを達成。その後方にフェラーリの2台がつけ、マクラーレンやレッドブルはそこから大きく引き離されてしまう……そんな結果となった。
メルセデスとフェラーリは、レース序盤はがっぷり四つ。まさに互角の戦いを繰り広げていた。しかし最終的にはメルセデスに軍配……この結末に至った過程には、ふたつの理由があったように思う。本稿ではそれを検証してみようと思う。
新時代のF1が幕を開けた。どのチームがアドバンテージを持ってこの新しい時代に漕ぎ出すのか……全く分からない状態で、各チームのF1マシンがアルバートパーク・サーキットを走り出した。
しかし予選を終えた段階で、メルセデスが圧倒的有利であることが明らかになった。ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリのふたりは、フロントロウを独占。しかもラッセルのタイムは、予選3番手のアイザック・ハジャー(レッドブル)より0.785秒も速いモノ。まさに圧倒的な差であり、この差は決勝になっても埋まらないのでは……そう思われた。
だが決勝レースがスタートすると、フェラーリ勢が抜群の加速を見せてメルセデス勢に襲いかかる。そして、前半戦は完全に互角の戦いであった。
■レース序盤はまったくの互角。しかしVSCが……
このグラフは、オーストラリアGPのレース序盤の、上位勢のレースペースをグラフ化したものである。赤がフェラーリ、緑がメルセデス……まったくの互角だったと言えるだろう。
ルクレールがスタートで前に出るとラッセルがこれをオーバーテイクし、すぐさまルクレールがやり返す……まさに抜きつ抜かれつの大バトルが繰り広げられた。
今季のF1は、昨年までのDRSに代わり、オーバーテイクモードを使うことができるようになった。これは前を行くマシンの1秒以内にいる時、次の周は1周にわたって回生できるエネルギー量が通常よりも0.5MJ増え、しかも使えるエネルギーも増えるというものだ。これが実に効果的であるということが分かった。また、任意の場面で電気エネルギーの出力を上げる、ブーストボタンも効果的であったのだろう。
ただルクレールは、長きわたって首位をキープする場面もあった。そして抜かれても抜き返す。これはおそらく、2チーム間のエネルギーマネジメントの設定に違いがあったという面もあるだろう。ラップタイムを稼ぐという面ではメルセデスの方に軍配が上がるものの、攻撃や防御といった面ではフェラーリ優勢……ということか? これは今後見えてくることだろう。
さてその後、勝敗を分けたシーンがあった。それが11周目にレッドブルのアイザック・ハジャーがストップし、バーチャル・セーフティカー(VSC)が出されたことだ。
今回のレースは1ストップ作戦が主流になると思われていた。しかし58周レースの11周目にピットストップしてしまうと、残り47周をノンストップで走り切らねばならない。これはあまりにもリスクが大きく、躊躇したチームもあっただろう。そのひとつがフェラーリだった。
フェラーリ勢はピットに入らず、ステイアウトを選択。一方でメルセデスは、2台揃ってピットインした。
フェラーリのフレデリック・バスール代表はこの判断について、次のように語っている。
「レースのあの段階で、誰も1ストップになるとは予想していなかった。我々は自分たちにとって最適な戦略を狙った。そしてその最適解はスティントを伸ばすことだった」
ハミルトンはこの時、「どっちか1台は、ここでピットストップした方がいいんじゃないか?」と進言しているが、この時点でピットストップすれば、”2ストップになるのは必至”とフェラーリは考えたわけだ。
これはなにもフェラーリだけの考えではなく、ピレリもレース後に「ハードタイヤのデグラデーションがあんなに小さいのは、土曜日の予想からすれば想定外」というコメントを発しているほどである。
さてステイアウトしたことで、フェラーリ勢は1-2体制を築き、周回を重ねていった。そして18周目、キャデラックのバルテリ・ボッタスがストップしたことで、このレース2度目のVSCが宣言されることになる。タイミングとしては、まさにフェラーリにとってはドンピシャであるように見えた……しかしフェラーリにはこれを活かせない理由があった。
ボッタスがストップして当該区間にイエローフラッグが振られた時、ルクレールとハミルトンは2つ手前のコーナー(ターン12)を通過中であった。そして彼らがボッタスのマシンの横を駆け抜けた時には、まだイエローフラッグのまま。しかし最終コーナーを立ち上がったところで、VSCが宣言された。これでは、フェラーリのふたりはピットインできない。ハミルトンはこの時無線で「よくないね!」と語っている。
しかし次の周で入れば、問題はない。セーフティカーではなくVSCなので、各車の間隔は詰まらないからだ。そのためルクレールは無線で、「よし、今だね」とピットインを決断。ハミルトンもウイングの調整を依頼する無線を送っている。
ただピットレーン入り口に到達する直前……あとコーナーふたつというところで、「ピットレーンクローズ」が宣言される。フェラーリ勢としてはこれは如何ともしがたく、結局ルクレールは25周、ハミルトンは28周を走ったタイミングで、アンダーグリーンでピットに入ることになった。
これでフェラーリ勢は、メルセデスの先行を許すことになった。ただ本来ならばフェラーリにはまだまだ勝機があるはずだった。彼らはメルセデスよりも新しいタイヤを履いたわけで、ペースの面でアドバンテージがあるはずであった。またフェラーリは1ストップ確定なのに対し、メルセデスは2ストップするはず……という考え方が濃厚であった。ただ、両方とも外れた。
■単独走行になると、メルセデスに軍配?
こちらのグラフは、レース中盤〜終盤にかけての、上位勢のレースペースの推移である。これを見ると、メルセデスはタイヤを交換した後(グラフ赤丸部分)はフェラーリ勢よりペースが速く、一方フェラーリがタイヤを変えた後(グラフ青丸部分)の両者のペースはほぼ同等であったことがよく分かる。これでは、フェラーリは届かない。
また周回を重ねれば、タイヤの性能は劣化し、ペースが落ちていくものだ。いわゆるデグラデーションである。しかしメルセデスのペースが落ちていっている傾向は見られない。
冒頭で申し上げたように、今季からF1新時代が幕を開けた。エネルギーマネジメントの重要性がこれまで以上に増したため、コーナーのかなり手前でリフト&コーストを行なうことを強いられ、タイヤへの負荷がかかりにくくなった……そしてその結果、デグラデーションが出にくくなったということなのだろうか?
ピレリもレース後、「デグラデーションが少なく、土曜日の予想よりも長く走行できた」とコメントしている。また前出のバスール代表も「タイヤがあれほど持ったことに我々は皆驚いた。あのタイヤなら350周くらい走れそうだった」と語っている。
とにかくフェラーリとしては、勝負できそうだったのにできなかったという、ちょっと不思議な敗戦だったと言えるかもしれない。
ただ、VSCなどがなく、真っ向勝負の戦いとなった場合には、一体どんなレースが繰り広げられるのか? レース前半のような戦いがしばらく続くのだろうか。大いに注目される。
次戦は今週末、中国GPである。

