ネット掲示板から生まれた“修行”カルチャー


「素人御免! 修行、足りてる?」
この大胆なキャッチフレーズが生まれた背景には、上級者コースを効率よく回せる高速ペアリフト「スカイラビット」にちなんだ、「今日は○○ラビット回した」といった表現が某ネット掲示板内で広がりを見せ、修行の成果を報告するかのような滑走記録が話題を呼び、経典のようなものも作成されるに至ったというようなことがあるようだ。
そうして彼らは修行僧と呼ばれるようになり、今日の野麦峠のコピーの源流の一つになったのではないかとも言われている。
“ローカル”とは、心の近さ

東海北陸自動車道の開通により、近隣の大型スキー場へ人が流れていくなか、野麦峠には「距離は遠くても通い続ける人」が残った。
「チェーン店じゃなくて、わざわざ行きたい個人経営の居酒屋みたいな存在なんじゃないかな」
最盛期に年間16万人が押し寄せた人の波が去ったあとに残ったのは、真のローカルと、磨かれた個性。
「俺の仕事は、リフト乗り場でハンドマイクを持って、お客さんを整列させて定員乗車させることだった。リフトは40分待ちだったからね」

そう語るのは、当初からスキー場の開発や整備に携わってきた、小林新蔵さん。
「例えば、リフトを降りたところが標高1,800mで、ちょうどダケカンバと白樺の境目。そこから伸びる全長1,200mの「樹海コース」は、両脇にはシラビの樹氷が並んでいて、雪がつけばまるで樹の海。真っ白な木々の中を、景色を楽しみながら滑れるんですよ」とおすすめコースを教えてくれた。

山頂からは、はじめにスキー場唯一の上級コース「エキスパートコース」か、中・上級「ラビットコース」かの二択となる。そこからさらに複数のコースへ枝分かれし、中腹のペアリフト乗り場までに、非圧雪2本を含む7つのコースが展開されている。いずれも大きく左右に曲がりながら、平均して急な斜面が続く。



ボトムまでの全長は4,000m。中腹を過ぎても平均して20~25度の斜面が続くが、途中には景色を楽しめる開放的な斜面も現れる。
さらに下ると初級コースに合流し、ようやく1本を滑り切る。

雨や湿雪の翌朝には、乗鞍岳、加賀白山、御岳、穂高連峰が頭をのぞかせる雲海が広がることもあるそう。日々修行を重ねる者だけが出会える、ご褒美のような景色だ。

山肌の起伏をそのまま感じられる変化に富んだワイルドな斜面も、山と向き合う感覚を養い、上達に一役買っているようだ。
