
「もしも動物の世界に入れたら」というテーマで、ユニークな“もしもの世界”が描かれるディズニー&ピクサーの最新アニメーション映画「私がビーバーになる時」が、3月13日(金)に劇場公開される。ピクサー作品らしい、キャラクターのかわいらしさと映像美も印象的な本作を、このほど試写で一足先に鑑賞。日本版で“ビーバーになる”主人公の大学生メイベルを演じる芳根京子の演技を中心に、見どころを紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
■大学生がビーバーに!思い出の森を救う
ディズニー&ピクサー最新作となる本作は、大好きなおばあちゃんとの思い出の詰まった森を守るため、メイベルが極秘テクノロジーを使ってビーバーになり、動物の世界へと飛び込んで奮闘する物語。監督をダニエル・チョン、脚本をチョンとジェシー・アンドリュースが手掛け、日本版声優陣には芳根のほか、キング・ジョージ役に小手伸也、癒やし系ビーバーのローフ役に宮田俊哉(Kis-My-Ft2)、そしてメイベルと対立するビーバートン市のジェリー市長役に渡部篤郎、虫の女王役に大地真央…と豪華な顔ぶれが名を連ねている。

19歳の大学生メイベルは、亡くなったおばあちゃんとの思い出の森にある池がコンクリートで埋められ、ジェリー市長の推し進める高速道路が作られる方針になったことを憂いていた。連日建設予定地に入っては工事の進行を遅らせるべく抵抗し、誰にも相手にしてもらえないものの市民の家を回って署名活動をするなど、たった1人で反対運動をしていた。
タイムリミットが迫る中、メイベルは池の近くで1匹のビーバーを見つける。「もう動物はいない」「動物がいないエリアだから工事の許可が下りた」というジェリー市長の主張を覆すにはこれ以上ない“証人”、ならぬ“証動物”だ。そっと尾行すると突然1台の車がやってきて、そのビーバーを乗せて走り去ってしまう。
メイベルが慌てて追い掛けたところ、着いた場所はメイベルの通う大学の実験室のようだ。そこでは彼女が“ドク”と呼んで慕うサム博士と助手たちが何やら秘密の実験をしていた。それは、動物型ロボットに人間の意識を伝送し、文字通り動物になるという最先端テクノロジー。試行錯誤を繰り返して作られただけあって精巧そのもので、本物の動物も仲間だと見間違うほど。それどころか会話もできる優れモノだ。
メイベルは「それってアバターじゃん!」と興奮するが、サム博士は「全然アバターじゃないわよ!」と強く否定。「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」も2025年12月に公開されたばかりだが、自らいじっていくスタイルがユニークだ。
それはさておき、メイベルはひらめいた。自分がビーバーになって動物たちを思い出の森にある池に呼び戻せば、池を守れるのではないかと。好奇心旺盛というか猪突猛進というか、メイベルはアバターならぬ動物ロボット=ホッパー(※ちなみに原題は『Hoppers』)にまっしぐら。それこそ猫もビックリのまっしぐらっぷり。「自然界に介入することは絶対ダメ」と博士たちに止められようが、もう止まらない。「すぐ返すから」とビーバー型ロボットに意識を伝送し、かくしてメイベルはビーバーになった。
子どもの頃から元気いっぱい逃げ回るのは得意だったメイベルだけあって、ビーバーになってからもフットワークは軽く、博士たちを撒き、しれっと動物界に潜り込むことに成功。動物の言葉も理解でき、会話できることに「これって最高!!」と大興奮で、さまざまな動物に話し掛けていく。
そしてビーバーを探していると、のんびり癒やし系のビーバー・ローフ(CV:宮田)を発見。その流れでローフがクマのエレン(CV:かなで)に食べられそうになるところを慌てて止めるが、それは「ルール違反」だそう。食物連鎖を受け入れ過ぎだろうと思うが、そういうものらしい。食べる側はともかく、「池のルールを破った。王様に言う」となぜか救ってもらったローフもご立腹の様子。
■哺乳類の王様キング・ジョージと出会う
エレンにくわえられ、池からいなくなった動物たちも含め、たくさんの生き物が集まったコミュニティーに連れられていったメイベル。そこにいたのが、陽気な哺乳類の王様キング・ジョージ(CV:小手)だった。
ローフやエレンが主張していた“池のルール”というのは、「(1)みんなと知り合え (2)食べたいときは食べろ (3)私たちはみんな一緒」だとジョージから教えられるメイベル。その上で「私たちはみんな一緒」「動物のおうちも、人間のおうちも一つの世界だ」とまで言い切るジョージに、メイベルは池を守りたいから協力してほしいと懇願する。
しかし、ジョージいわく「あそこに戻りたいやつはいない」「うるさいから」。人間のメイベルには分からないが、思い出の池の周りから動物が消えたのは、ジェリー市長が仕掛けた“モスキート音”のような動物にしか聞こえない周波数の音が鳴る、スピーカーが付いた人工の木が原因であることが分かった。
勇敢にもメイベルは騒音の原因である木に登り、スピーカーもろとも倒して壊す。そして「みんなであの池を取り戻そう!」とメイベルは高らかに宣言し、動物たちは再び池に戻った。ジョージもすっかりメイベルを気に入り、“王の足”になってほしい、ゆくゆくは“王位継承者”にしたいと告げる。
だが、ジェリー市長が黙っているわけがなかった。すぐさま新たに“偽の木”を複数建て、再び動物たちを追い出す。そこで哺乳類の王ジョージのほか、虫の女王、鳥の王、魚の女王、爬虫類の女王たち、両生類の王らからなる“動物大評議会”を緊急招集し、ジェリー市長の悪行を告発。やがて評議会一同が、「ジェリー市長を“潰しの刑”に処す」という目的で団結し、メイベルが想像していたものとは違う危険な展開になっていく――。

■芳根が見せる自然体の演技
2023年にデビュー10周年を迎え、2026年2月28日には29歳の誕生日を迎えた芳根。アニメーション映画への出演は「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」(2024年)以来2年ぶり、洋画アニメーション映画の吹き替え版となると「ボス・ベイビー ファミリー・ミッション」(2021年)以来約4年半ぶりとなるが、実写版での演技力そのままに自然体の声の演技を見せている。
感情表現が激しい大学生メイベルの声をよどみなく発し、ビーバーになってからもさらにジェットコースターのように慌ただしい動き、絶叫などハチャメチャな声色を使い分け、不協和音にならない絶妙な温度感で演じた。メイベル(※ビーバーの)が実は泳げないというくだりでは、本当に水の中に入ってしゃべっているんじゃないか、と錯覚するほどナチュラルに表現し、吹き替えでも“芝居の申し子”ぶりを発揮している。
■実力派俳優たちの掛け合いシーンが絶品
また、芳根自身の演技もさることながらジョージ役の小手やジェリー市長役の渡部との声の掛け合いシーンも絶品。お笑い好きらしくバラエティー番組などでも芸人を相手に見事な“間”と表情でトークを展開することが多い芳根だが、今作でも欧州の強豪サッカーチームさながらの圧巻のワンタッチパスがごとく軽妙なテンポ感で彼らと会話しており、思わず試写室にいるのを忘れ、声を出して笑ってしまったほど。実力派が集うとこうも面白くなるのか。
特に序盤のジェリー市長との対峙(たいじ)シーンは「丁々発止」という言葉の意味はこういうこと、と説明するのにピッタリなほど、丁々発止の掛け合いを見せるので、「丁々発止」を説明するのが難しい親御さんはぜひ、お子さんに見せながら「これよ」と伝えてみてほしい。
2025年は主演ドラマ「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ系)で日本中をピュアな演技で魅了し、ザテレビジョンドラマアカデミー賞(主演女優賞)やエランドール賞(新人賞)を受賞した芳根が、今作ではもふもふのビーバーとして日本中を笑顔にする。
「小さな頃から今までたくさんのピクサー作品から夢や勇気をもらってきた」という芳根は、ディズニー&ピクサー作品初参加。だが、幼少期から動物が好きで「パンダになりたい」と夢見た彼女だけあって、動物の世界を守るビーバーになる役というのは願ってもない役だろう。前世はビーバーだったのかと疑いたくなるほど、セリフにならないくらいのちょっとしたしぐさに当てる声もピタッとハマっている。
ピクサー作品らしく、もふもふな動物がかわいい!ということだけでなく、説教くさくならない程度に人間と動物の共存や自然破壊の問題など、社会派な面も内包。春休みの子どもたちだけでなく、大人世代も考えさせられる作品になっている。そして見終わった後は、ついついジャガイモのスタンプを押したくなるだろう。
「私がビーバーになる時」は、3月13日(金)に劇場公開。ディズニー&ピクサー過去作はディズニープラスで配信中。
◆文=ザテレビジョンシネマ部

