昨年11月7日、高市早苗首相が国会答弁した台湾有事における「存立危機事態」発言以降、発言の撤回を求める中国は日本への「制裁」「威嚇」をエスカレートさせるばかりだ。
中国は2月24日、日本への「デュアルユース品」の輸出を日本の20の企業・団体に禁止すると発表した。「デュアルユース品」とは、軍事にも民間にも使える品目のこと。800品目以上あり、焦点になるのはレアアース(希土類)だ。
レアアースは軍事製品やロケット、EV(電気自動車)、スマートフォンなどハイテク産業の“必須ビタミン”とされる。世界シェアで採掘の7割、精錬の9割を中国が握り、その輸出規制で米国、欧州を揺さぶってきた強力な外交カード。
対日企業への「輸出禁止」は、三菱重工業やIHI、川崎重工業など防衛関連企業はもちろん、防衛大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども入っている。加えて、予備軍として東京科学大学も含め、20企業・団体を監視対象としている。
「昨年来、中国は高市氏の台湾有事を巡る国会答弁の発言撤回などを視野に猛反発してきた。ところが、高市氏は発言を撤回するどころかスルー。2月の衆院選で高市自民は316議席の歴史的大勝を収め、政権運営を盤石なものとした。まさに“高市1強”です。
現政権内で誰も意見できない状況に、中国は全く動じないという意思表示がデュアルユース品=レアアースの輸出規制です。日本国内で宇宙産業や防衛関連企業などを狙い打ちにし、日本の重要・基幹産業をボロボロにする露骨な作戦に出てきた」(外交アナリスト)
日本のレアアース調達における中国への依存度は62.9%(’24年)。’10年は89.8%だった。
「日本はレアアースをオーストラリアなどからも調達しているが、メインは依然、中国。これが大きく制限されれば、日本は3カ月の規制で約6600億円、年間2~3兆円の損失となると民間シンクタンクが試算している。
高市首相は今回の20社禁輸に国会答弁で『遺憾』砲を撃つだけで、具体的対抗策の構えはみせていない。というのも、3月に国賓待遇での訪米があり、トランプ大統領が会談で解決策を打ち出してくれる、と甘くみていたフシがある。しかし、トランプ氏は米軍とイスラエル軍のイラン攻撃でそれどころではない。トランプ関税の合憲性が争われた米連邦最高裁の違法判決も出た。とても日本のことなどに構っていられない」(金融系エコノミスト)
【関連】高市政権「食品消費税ゼロ」は“焼け石に水”。卵高騰、世界的「カニカマブーム」が日本の食卓を直撃!
支持率ダダ下がりで中間選挙は大敗必至!
2月20日、米連邦最高裁は国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に世界を揺さぶってきたトランプ相互関税に対し、大統領の権限を超えているとして違法判決を下した。
判決後、トランプ氏は「非常に残念で恥ずべきものだ」と批判。その上で、米通商法122条に基づき世界各国に10%の関税を課し、さらには15%に引き上げることを表明している。
「今後、トランプ氏はさらなる新関税をぶち上げるなど、強気の姿勢を崩さないでしょう。2期目発足当時の支持率は50%を超えていたが、2月24日時点の支持率は42.2%(米リアル・クリア・ポリティクス)、不支持率56.2%と低迷している。中には、支持率が39%(ワシントンポスト)と、40%を切る調査もあります」(政治アナリスト)
支持率低迷の背景には、犠牲者続出の移民対策や一向に収まらない物価高といった“失政”が挙げられる。
「半数以上の米国民は不満を募らせている。南部テキサス州で行われた1月31日投開票の連邦議会下院と州議会上院の補欠選挙や、最近の主な選挙で共和党の敗北が続いている。今回のトランプ関税での最高裁違法判決でさらに支持率が下がるとみられ、トランプ政権のレームダック(死に体)化に拍車が掛かりそう。11月の連邦議会中間選挙は、日本の中道改革連合のように『大敗必至』とささやかれ始めました」(同)
窮余の策としてトランプ氏は3月31日からの米中首脳会談で、中国側から大きな成果を引き出したいところだが、早くも同会談は中国側にイニシアチブを握られていると、もっぱらだ。
トランプの“援護射撃”は期待薄
「昨年、トランプ氏は中国に高関税を仕掛けたものの、中国は対米レアアース輸出規制強化の反撃に出た。トランプ氏は昨年10月末に韓国で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に合わせた約6年ぶりの中国・習近平国家主席との直接会談で“ヨイショ”しまくり。結局、レアアース輸出規制強化の1年延期を引き出している。今度の訪中会談ではレアアース問題に加え、米最高裁でのトランプ関税を巡る違法判決と支持率低下の大逆風の中、さらなる“ヨイショ会談”を展開することになるでしょう」(政治記者)
いくら日本と米国は同盟国といえども、自国での支持基盤が揺らいでいるトランプ氏が、中国の対日制裁に強力な援護射撃を繰り出すとは到底考えられない。
「つまり、トランプ氏のこれまでの対応を踏まえ、中国の日本制裁に当面は何もしてくれない、否、むしろ何もできない、と高市首相は肚を括って対策を練るべき」(政界関係者)
衆院選で3分の2以上の議席を獲得した高市政権に国内では向かうところ敵なし。だが、国外に目を転じれば、米中の2大国による形の異なる外圧は増すばかりだ。
高市氏はこのダブル外圧を、押して押して押して押して、押し返せるか。
『週刊実話』3月19日号より
