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空色のラッパムシの「すみっこ好き」を発見――目も脳もない単細胞の空間把握

空色のラッパムシの「すみっこ好き」を発見――目も脳もない単細胞の空間把握

「すみっこぐらし」は生態系を支えている

ラッパムシの行動切り替えはほとんどカルシウムイオン(Ca²⁺)が関与します。周りに壁や突起などの構造物があると、ラッパムシはその表面に何度もぶつかります。その衝撃がきっかけとなって細胞の表面にある小さな入口が開き、外からCa²⁺が一気に流れ込むことで、細胞全体がぎゅっと縮みます。この収縮で体の形が少しゆがみ、前側のエンジン部分の向きが変わることで、ラッパムシは自然と壁に沿って進む「壁づたい泳ぎ」に入り、そのまま角や溝の「すみっこ」に誘導されていきます。やがて狭い場所でスピードが落ちて固着が起こると、今度は逆にCa²⁺が細胞の外へ出ていき、濃度が下がることで体は再び細長く伸びてラッパ型になります。/Credit:Geometrical preference of anchoring sites in the unicellular organism Stentor coeruleus

ラッパムシがすみっこを見つける仕組みは、単に「ちょっと面白い話」で終わるものではありません。

この小さな単細胞の行動が、自然界のもっと大きな仕組みや生態系全体と深くつながっているからです。

北海道大学と富山大学の研究チームは、このラッパムシの発見を通して「目には見えないミクロな世界の地形が、生態系全体の形を左右している可能性がある」と説明しています。

私たちがふだん目にする池や川の底には、砂粒や泥、小さな石が積み重なっていて、一見どれも同じような風景に見えます。

しかしラッパムシほど小さな生き物の視点で見ると、そこは細かい溝や鋭い角、入り組んだ狭いすみっこが無数にある、とても複雑な地形です。

こうしたミクロな地形のすみっこは、水流が弱まり、有機物や細菌がたまりやすい「居心地のよい一等地」になり、そこにラッパムシのような単細胞生物が定着すると、その周囲にはさらに別の微生物や、それをエサにする小さな動物プランクトンが集まり、順々に食物網が立ち上がっていきます。

こうして、水中の小さなすみっこで起きた微生物の小さな集まりが、やがては水辺の生き物全体の生息場所や移動パターン、ひいては生態系のバランスそのものまで影響を及ぼしうるのです。

目には入らないほど小さなすみっこが、実は多くの生き物の暮らしを支える“見えないインフラ”になっている——ラッパムシは、そのことを教えてくれる代表選手なのです。

【※最後になりましたがプレスリリースを提供して頂いた北海道大学電子科学研究所の西上幸範氏に感謝いたします】

参考文献

ソライロラッパムシの「すみっこ」好きを発見~目の無い単細胞生物の空間把握メカニズム~(電子科学研究所 特任助教 越後谷駿、准教授 西上幸範)
https://www.hokudai.ac.jp/news/2026/02/post-2199.html

元論文

Geometrical preference of anchoring sites in the unicellular organism Stentor coeruleus
https://doi.org/10.1073/pnas.2518816123

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

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配信元: ナゾロジー

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