“環境が人を育てる”という思想

八木さんのクリエイティビティは、スマイルリゾートの施設づくりにも及ぶ。ホテルの客室からスキーセンター、レストランの設計まで、執行役員自ら関わるのだ。
「もう10年以上に渡って海外の50を超えるリゾートを視察してきました。海外のリゾートはスケールも大きいし、リゾート感もあるし、どこも素晴らしい。温もりのある木や重厚感のある石を使った雰囲気たっぷりの建物や、天然の木目をあしらった心が落ち着くインテリア、美しい間接照明など、洗練されたテイストは、どこか共通したものがあるように思うんです。伝統的な良さと新しさが巧みに溶け合っていて。
それに比べると日本のリゾートはバブル期の古いままだったりする。それだとお客さまもワクワクしないじゃないですか。だからそういうところは変えていきたいし、小さなことにもこだわりたい。今年、舞子スノーリゾートの日帰りスキーセンターのカーペットを変えたんですが、それだけでも雰囲気がずいぶん変わりましたよ。
それに、環境がかっこよくなると、スタッフは背筋が伸びる。高級ホテルのフロントに立つと自然と立ち居振る舞いが変わるように、働く環境そのものがスタッフのレベルを引き上げる。そう考えているんです。それはそのままお客さまへのサービスの向上につながる。
だから僕、どこにいってもいつもずっとキョロキョロしてますね。何かを見れば、なるほど、この技術やあつらえはウチの施設にも使えないかなぁ、とか考えてる。考えすぎて気持ち悪くなるくらい(笑)」

八木さんは、根っからのアイデアマンでもあり、自ら客室のあつらえまで手作りしてしまうという本格派DIYマンだ。むいか温泉ホテルには八木さんのこしらえた自慢の部屋がある。今回は、その部屋(写真上)で話を聴いた。
「業者に頼むと時間がたくさんかかっちゃう。できることは自分たちでやっちゃったほうがスピーディですしね」と笑う。
八木さん、執行役員でしたよね…?
360日の覚悟
リフトを延ばす、キャットツアーを走らせる、山の上にキッチンカーを持ってくる。「これがほしかったんだ」と、八木さんは一見、自分の好きなように新しいことを次々と実行しているように見える。実際そうだ。しかし、その仕事のスタイルは独裁者とは程遠い。
「一人から理解してくれる仲間を作って、徐々に周りに広げていく感じかな。僕のやり方は。おもしろいことだと気づいてもらうと、みんな〝自分ごと″になって知恵を出し合ったり、急にチームが固まって目的に向かって動き出したりするんですよね。何か新しいことをやろうとすれば、自分一人では決してできなくて、必ず他の部署や周りの人との連携や調和が求められる。人を巻き込んでいく、それを攻略していくっていうのも楽しいんですよね」


八木さんは、スマイルリゾートに来る前は、カヤック競技の世界タイトルを持つほどのトップアスリートだった。国際大会を転戦する選手からスキー場を統括する経営者へ。「一緒にスキー場やらない?って声をかけられたから」と簡単に言うが、まったく違う畑への劇的キャリアチェンジの背景には、どんな思いがあったのだろう。
「それまで、年間360日水を漕ぐ人生だったんですね。その情熱を今度は仕事に注ぎたくて転職したんです。だから僕、360日働ける体制なんですよね」
これが八木さんの覚悟だ。だからいつもこんなにパワフルで熱いのか。シーズン中、毎日山に上がることが億劫になることはないのだろうか?
「ない、ですね。午前中東京にいても、午後には湯沢に戻って必ず山には上がっていますね。任されているから毎日しっかり見ておきたいという気持ちなのかな」
