「こんな人たちと一緒にはたらきたい」から始まったヘラルボニーでの挑戦
──そこから、次のキャリアにヘラルボニーを選ばれた背景についても教えてください。
とある展示を訪れて、ヘラルボニーの契約作家さんの作品をはじめて見たときに、シンプルに「めちゃくちゃかっこいい」と思ったんです。固定観念なんてない、異才を放つ作品たちに衝撃を受けました。
そして展示を出てすぐにネットで検索して出てきたのが、今も変わらない「異彩を、放て。」をミッションに掲げる、創業1年目のヘラルボニーでした。
「これはすごい会社を見つけてしまった」と思い、当時関わっていたNPOのチャットグループにヘラルボニーのHPリンクを共有し、「どえらいものを発見しました!」とメッセージを送ったんです。すると、NPOの代表から「松田兄弟と仲良しだから、予定を聞いてみるよ。4人でご飯に行こう」と返信がありました。
そうして、代表である松田崇弥さんと文登さんと一緒に食事をする機会は実現しました。その時点では具体的な仕事の話をしたわけではありませんでしたが、描く未来や人柄に強く惹かれたことを今でも覚えています。
食事会から約2年後にぼくが無職になったタイミングでその内容をFacebookに投稿したところ、代表から仕事のことでメッセージをいただいて。
ヘラルボニーの取り組みに共感もあり、仕事も面白そうだとは思っていたけれど、具体的にどんなことをしているのか分からなかったので、東京に行って再び話をすることになりました。そのときに、「実際にはたらいている社員の方々にも会わせてください」と伝えたんですね。そこで出会ったヘラルボニーのメンバーたちがとても印象に残り、最後の決め手になって入社しました。
──ヘラルボニーではリテール事業部 シニアマネージャーを務められています。具体的な仕事についてもお聞きしたいです。

実店舗やポップアップストアなどはリテール事業部が主導していて、たとえば2022年に行った阪急百貨店うめだ本店での催事は、ヘラルボニーとして過去最大規模の挑戦であり、その企画運営を主導しました。会期は13日間、約90坪の広さを使い、原画約150点を展示した「ヘラルボニーアートコレクション」です。
これまでも全国でポップアップストアはやってきましたが、この規模はまったく別物でした。阪急百貨店の担当の方々と一緒に、企画のすり合わせに始まり、売り場づくり、オペレーション、スケジュール管理など、細やかに調整していきましたね。
延べ数万人の方に足を運んでいただき、「ヘラルボニーの世界観を、これだけ多くの人に届けられた」という実感があり、大きなやりがいとしても印象に残っています。
──今のお仕事は、これまでとはまた違った新しい挑戦だと感じます。これまでの経験で、現在の仕事に活きていることはありますか?
これまでさまざまな場所ではたらくことを通じて、「自分が面白いと思えるか」が仕事選びの大事な軸になるという気付き。これがヘラルボニーではたらいている今につながっているので、培った経験や感覚が活きていることの一つでもあると思っています。
あとは、情報を集め続けることですね。良いアウトプットは、良いインプットから始まります。少年院での生活をきっかけに、本をはじめとして、とにかく多くの情報に触れました。ピースボートでも、さまざまなお客さまの対応をする過程で、求められている必要な情報をそろえることが仕事の質を左右することを実感しました。
自分は学があるタイプではないので、最初から質の高い答えは出せません。だからこそ、情報を取りに行き、それを実行に移して、まずは数をこなしてみる。その中で「これは違う」などを知り、PDCAを回して質を追求できるんだと思います。
質の追求の起点となる、情報を集め続けることはこれまでの経験があったからこそ身に付いたもので、今にも大いに活きています。
「誰とはたらくか」を大事にしてきたからこそ、行動を続けられた
──若者の中には、そもそも自分が何を望んでいるのか、仕事で大事にしたいことは何かがまだ見えていない人もいると思います。そんな若者へ、新井さんならなんと声をかけますか?
「挑戦してどう思われるか」「失敗したらどうしよう」と、自分に矢印を向けすぎなくていいと思っています。大事にしたいことややりたいことなど、ぼくたちは無意識に固定観念や自己認識の中だけで考えがちです。
でも、その枠は会う人や環境によって大きく広がります。今は自分が望むものが分からなくても、自分探しではなく、“世界探し”をすると、もっといろいろな選択肢が見えてきて、そこにあなたの価値観がゆさぶられる何かがあるかもしれない。
世界は思っている以上に豊かで、人は優しいです。外に出てみると、意外と自分のことを受け入れてくれる人は多くいます。実際にぼくも世界一周の船旅に出て、そのことを痛感しました。
だから、会ってみたい人に会いに行く、行ってみたい場所に行ってみる。そんな小さな行動から始めて、それを繰り返すことで、自然と自分が選ぶものが見えてくると思います。
──最後に、スタジオパーソルの読者である「はたらく」モヤモヤを抱える若者へ、「はたらく」をもっと自分らしく、楽しくするために、何かアドバイスをいただけますか?

自分らしく、楽しくはたらくことを実現する要素は、「何をするか」「誰とはたらくか」「どこではたらくか」など、人によってさまざまです。そして、その優先順位も十人十色。
ぼくの場合は、はたらく条件よりも、心の底から仕事が面白いと思えているか、やりたい気持ちが動かされるかを優先するほうが、楽しく生きられるタイプだとこれまでの経験を経て気付きました。
そして今、その楽しさは業務内容以上に「誰とはたらくか」で大きく変わることも実感しています。尊敬できる人たちと一緒に取り組める環境では、「自分もここに居ていいんだ」と思えて、自然と前向きに頑張れるんです。
はたらき方の正解は一つではありません。無数にある選択肢の中で、自分が一番ご機嫌でいられる条件は何かを、トライアンドエラーで探してみてほしいです。
(「スタジオパーソル」編集部/文:石田千尋 編集:いしかわゆき、おのまり 写真:水元琴美)

