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F1分析|最強メルセデス、同じPU使うカスタマーチームとの差が大きく開いたのはなぜか?

F1分析|最強メルセデス、同じPU使うカスタマーチームとの差が大きく開いたのはなぜか?

F1開幕戦オーストラリアGPの後、新レギュレーションへの不満とは別に、メルセデスの圧倒的な強さが大きなトピックとなった。同じパワーユニット(PU)を使用しているカスタマーチームは、その強さに驚きを見せた。

 メルセデスのトト・ウルフ代表は、ジョージ・ラッセルがオーストラリアGPを制した後、「まだフェラーリとの戦いが続く」と語った。しかしメルセデスがライバル勢より一歩抜け出していることを示すシグナルはいくつも見られる。

 レース序盤は予想以上に接戦だったが、それはレギュレーションの特性による部分も大きい。エネルギーマネジメントは、いわば“ヨーヨー”のような状態になっている。ドライバーが前のマシンをオーバーテイクしても、その後のストレートでエネルギーを多く使った代償を支払うことになり、逆に抜き返される可能性がこれまで以上に高くなっているのだ。

 だからこそマクラーレンのランド・ノリスは、レースについて「予選よりもさらにひどい」と表現し、「あまりにも人工的すぎる」と不満を口にした。

 しかしメルセデスが先にピットインしてクリーンエアを得ると、その真のアドバンテージが明らかになった。特にラッセルは、フェラーリのピットストップ後、使い古したタイヤのままでもより速いラップタイムを刻んでいた。



■メルセデスの強みはエネルギーの使い方

 メルセデスがベンチマークとなっている理由のひとつは、非常に効率的なエネルギー・デプロイメントにある。これは土曜日の予選ラップの分析でもすでに明白だった。

 ラッセルのポールラップと、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)による最速ラップをテレメトリデータで比較すると、メルセデスはほぼすべてのコーナーで速かったことが分かる。

 通常であれば、空力的にもエネルギーマネジメント的にも、コーナーで速ければ、その分ストレートで代償を払うことになる。しかしメルセデスの場合はそうではなかった。ここにこそ大きな強みがある。

 ラッセルはFIAのスピードトラップで突出して速かったわけではないが、それでもストレート全体を通してマクラーレンに対して多くのタイムを稼いでいた。差が大きくついたのはターン6へ向かうストレートとターン9へ向かう区間だった。

 ターン6に向かう区間では、ピアストリは早めにアクセルを戻している。一方ラッセルはより長くフルスロットルを維持していた。通常ならその分エネルギー回生量が減り、次のストレートで不利になるはずだ。

 しかし実際にはその逆だった。ターン9へ向かうフルスロットル区間では、タイム差はさらに拡大し、ピアストリはラッセルよりもかなり早くスーパークリッピング(エンジンを全開で回しながらMGU-Kで回生を行なう)へ移行していた。

 これはメルセデスがカスタマーチームに対して効率面で大きな優位性を持っていることを示している。メルセデスはコーナーで速いだけでなく、より低いギヤを多用するなどして十分なエネルギーを回生し、ストレートでも失速するどころかライバルより速度を伸ばしているのだ。

■カスタマーチームはまだ学習段階

 では、基本的に同じPUを使用しているにもかかわらず、なぜメルセデスはここまで効率的なのか。

 一部はシャシーや空力パッケージの違いによるものかもしれないが、それだけでは説明できない。より重要なのは、新型パワーユニットから引き出せるエネルギーの運用における違いだ。

 レース後、マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラは次のように語った。

「我々は多くのデータを分析した。特にメルセデス、そして他のライバルとの比較だ。その結果、HPP(メルセデス・ハイパフォーマンス・パワートレインズ)のエンジニアと協力してチームとして改善すべき点があることは明らかだった」

「HPPが引き出しているポテンシャルを見ると、まだ活用できる部分があるように思える」

 ただし、その方法は簡単ではないとステラは言う。

「我々にとっては知識を積み上げていくプロセスの最中にある。おそらく、いや間違いなく、ワークスチームよりも手前の段階にいると言えるだろう。ワークスチームとHPPは長い時間をかけて一緒に仕事をしてきたし、PUの使い方についても多く議論してきたはずだ。それは当然のことだ。ただ、我々もHPPとの協力関係をさらに強化していく。いくつか”低い位置にある果実”、つまり比較的取り組みやすい改善点があると理解しているからだ」

 こうした状況は、ある意味でワークスチームが持つ通常通りのアドバンテージとも言える。しかしステラは、それだけではないと考えている。

 実際、メルセデスのカスタマーチームはバーレーンテストの段階で、ワークスチームとは異なる仕様の2026年型エンジンを使用していた。マッピングなどの面でも、よりベーシックな仕様だったという。これは契約上の義務の範囲内ではあったものの、結果としてワークスチームは実際のパッケージについてより多くの学習を進めることができた。

「これがすべての性能なのか、それとも我々が十分に活用できていないだけなのか、という点については、まだ分からない。それを理解するためには、さらに分析が必要だ。我々がコントロールできるパラメータやドライバーの操作だけの問題なのか、それともカスタマーチームでは必ずしもコントロールできない、よりシステム的な要因があるのかを見極める必要がある」

 ステラの発言の最後の部分は非常に重要だ。つまりステラは、マクラーレンがすべてを自分たちの裁量で扱えているわけではないことを示唆している。

 ここでいう“利用可能な範囲での対応”にはふたつの意味がある。ひとつはサーキットに合わせたエネルギー・デプロイメントの準備、もうひとつはマシン全体の開発だ。

 一方、レース後にメルセデスのトト・ウルフ代表は、メルセデスがすべての義務を果たしていることを強調した。つまりカスタマーチームにも可能な限りのサポートを提供しているものの、新時代の幕開けは単純なものではないというのだ。

「新しいレギュレーションが導入されれば、学ぶべきことは非常に多くなる。ギヤボックスやサスペンションを供給する場合も、PUの場合も同じだ。開発の勾配は非常に急で、すべての人を満足させる形で展開することはできない。ただ、最も重要なのは我々がカスタマーチームに良いサービスを提供しようとしていることだ。その姿勢は常に変わらない」

■ウイリアムズは”衝撃”「これほど差があるのか」

 ウイリアムズのジェームス・ボウルズ代表ほど、ワークスとカスタマーの両方の立場を知る人物はそう多くない。彼はかつてメルセデスに在籍していたからだ。

 そのボウルズもマクラーレンと同様に、オーストラリアGPでメルセデスとカスタマーチームの間にある差の大きさに驚いたと語った。

「メルセデスがPUでやっていることは、我々にとって完全に不意打ちだった。予選を終えて初めて、その分野でどれほど自分たちが遅れているのかがはっきりと分かったんだ。おそらくコンマ3秒程度、だいたいそのくらいだろう」

 ただしボウルズは、メルセデスが意図的にカスタマーチームに対して何かを隠しているという見方は否定している。

「これまでも言ってきまたが、メルセデスはカスタマーチームに対して非常にフェアだ。我々は彼らがアクセスできるものすべてにアクセスできる。ただ単に、彼らの方が我々より賢くやっているだけだ。そしてそれを理解し、追いつくのが我々の仕事だ。とはいえ、これほどまでに差があるのかと少しショックだった」

 ただしボウルズが言う”アクセス”には、PUの性能を最大限に引き出すためのノウハウまで含まれるわけではない。だが彼は、それは当然のことだとも認めている。

「想像するような“完全にオープンなドア”ではない。パフォーマンスはそこにあるわけだから。だからこそ、そこをどう攻略するかは我々自身の仕事になる。ただ正直に言えば、我々ウイリアムズは彼らと同じレベルまで技術的に洗練されていない。それは完全に我々の問題であって、彼らの問題ではない」

■マクラーレン、独自エンジン路線には興味なし

 本質的にこれはパッケージングの問題に加えて、ワークスチームに対するカスタマーチームの構造的な不利のひとつでもある。特に大きなレギュレーション変更の際には、その差がより顕著に表れる。

 ただし、それはマクラーレンがすぐに長期的な戦略を変えることを意味するわけではない。

 たとえばホンダとの袂を分けたレッドブルのように、自前のエンジンプログラムを構築するような方向に進むのかと問われたマクラーレンのザク・ブラウンCEOは、次のように答えた。

「我々はHPPにとても満足している。誰もが不可能だと言っていた中で、我々はすでにいくつかのチャンピオンシップを獲得したからね。レッドブルがやっていることにはとても感心している。ただ、彼らが取り組んでいるプロジェクトは容易いものではない。そこは称賛すべきだろう」

「ただ私は現状に満足しているし、今は目の前のことに集中している。もちろん将来もしチャンスがあれば検討はするだろう。しかし同時に、うまくいかなかった場合のリスクも見えてくるからね」

 メルセデスのカスタマーチームにとってひとつ確かなのは、競争力のあるPUが供給されるという点だ。そしてそれはメルボルンでも証明された。

 近年はカスタマーのマクラーレンに後れを取ってきたメルセデス。あくまでも現時点ではそうした勢力図が逆転している。メルセデスにとっては、まさに理想的な船出となったと言える。

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