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鈴木涼美「こんなふうに“男”でしかない自分を必死に生きている男たちと、女は恋愛して駆け引きしてなんとか殺し合わずに共存しなきゃいけないんだよな」

鈴木涼美「こんなふうに“男”でしかない自分を必死に生きている男たちと、女は恋愛して駆け引きしてなんとか殺し合わずに共存しなきゃいけないんだよな」

具体的なビジョンが何もないからあまりにもリアル

ずっと一人と思うと心細い、ふるえるほどの恋愛してみたい、結婚で生活が安定したら仕事に打ち込めるかな、社会的信用もアップするかな、毎朝素敵な相手が横で起こしてくれたらうれしいな、かといって縛られるのは嫌だな、気をつかって疲れるのも、一人の時のきままさを失うのも嫌だな。どれも本音で、どれも大事だが、一番の優先事項という感じでもない。一番の優先事項とは何か? 自分が心地よく生きる、とかその程度の、やはりもわっとしたものなのだろうか。

可笑しさと切実さとちょっとした社会問題を内包した漫画はとても面白いが、著者はただの一度も、婚活が成就した後の理想の生活や、相手に何を求めるかではない、自分がどんなことをしてあげられて何を提供できるかについて描くことをしない。そうであればデート相手も私たちもきっと自分自身さえも、著者が本当に何をしたいのかはよくわからない。他者ともっとかかわりたい、というのは部活に入るくらいでも結構満たされてしまう気がする。

彼女出来ないとか理想の女がいないとか出会いがないと宣う男はみんな、理想の女と出会ったらどうするのか、自分は彼女に何を与え、どういうパートナーになろうと思っているのかを驚くほど考えていないというのは、そこそこ恋愛相談とかを受けてきた私が何度も実感してきた真理。そういう意味でも、具体的なビジョンが何もない本作はあまりにリアルなのだ。彼はおそらく私と同じくらいは、デートをエクセルに落とし込む作業を想像できないはずだ。だって何を目的に結婚をするのかも、どんな結婚が理想なのかもいまいちはっきりしていないのだから。

それは結婚かもしれないし結婚じゃないかもしれないけれど、著者のそこそこ満たされているけれども完璧に幸福というわけではない日常をドラマチックに補完してくれる何かを探す旅は続くのだろう。その過程はきっとまた、私たちを惹きつけるとびきり面白い漫画となっていくはずだ。次は同性の親友づくりとかどうですか。

文/鈴木涼美

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