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雪の村は、水で未来をつくる—野沢温泉・本沢小水力発電所の挑戦

「売る」ためではなく、「使う」ための発電

さて、作った電力を「自分たちで使う」とは、具体的にはどのようなことだろう。

来場者が行き来できる2基のエレベーター

「長坂のセンターハウスの建物にエレベーターが3台あるんですけれども、それと電気ヒーター。あとは暖房機、そういったものを発電した電力で賄っています。今回この小水力発電の稼働によって、センターハウスの電力使用量を32%ほど削減できています。

正確な削減率の算出は蓄電や送電実績を含めると非常に複雑ですが、長坂ゴンドラで使用している”信州Greenでんき(100%水力)”と合わせれば、スキー場の中心部はすでに大きな再エネの循環のなかに置かれていると言っても過言ではないでしょう」

スキー場を統括する高澤氏がそう答えてくれた。

このシステムの核心は、人の手を介さない徹底した自動化にある。本来、出力調整や再稼働時の電流制御は極めて繊細で危険な作業。だが、メンテナンスフリーとコスト削減を追求し、完全自動運転を実現している。

具体的には、コンピューターが建物側の電力需要をリアルタイムで検知し、最適な水量を瞬時に算出。蓄電状態に応じて水車を自動停止させ、河川水の過剰利用を抑え、生態系保護にも繋げている。
さらに、ブラックアウトや火災リスクを徹底排除する制御プログラムを搭載するなど、現場を見守りながら電気を安定供給するこの仕組みは、唯一無二のものだ。

「小水力発電で自家発電した自然のエネルギーを、そのままお客様が利用する施設で実際に使うというこのサイクル〝循環が見える”ことは非常に大きいと思うのです。

全国でもほとんど事例がないようなので、かなり先進的な取組みではないかと自負しています」

上野村長の言葉にも熱が入る。

長坂センターハウス

野沢温泉らしさを大切に

本沢小水力発電所による最大使用水量は毎秒9.3ℓ。流れている水を全部発電に使うのではない。発電使用水量70%を取水し、30%は沢の維持流量として沢に残される。発電に使用した水も、すべて沢に戻される。

「自然に負荷をかけないという観点を大切にして、自然の流れを変えないことが前提でした。水はもともとここを流れているものです。その流れのなかで、無理のない範囲で借りる。その考え方で設計しています。

魚道も設け、既存の農業用水とも共存する仕組みです。自然に無理をさせるやり方は、野沢らしくないと思いました」

雪の下で流れ続ける本沢の清流

上野村長のその言葉には、この村の姿勢が表れている。

本沢小水力発電所は、けっして巨大な設備ではない。全国的に見れば小規模だ。
しかし、その背景にある意思は明確だ。上野村長が続けて言う。

「野沢は昔から、自分たちで切り拓いてきた村です。100年前に開発したスキー場もそうですし、それより以前に人工池を掘って水車を回して発電をして、電気の灯る温泉地を創り上げたこともそうです。
我々、野沢の村民には挑戦者精神みたいなアイデンティティがあるのだと。それが根強くあるおかげで、今回の取り組みも、村の皆さんの理解につながっているのかなと思っているんです」

このような、土地が絡む行政の計画には、その土地の所有者との交渉が難航したり、途方もない時間がかかったりするのが常。だが、今回の小水力発電の開発に対しては、そうした問題はほとんどなく、快く理解が得られ、スムースに動きも進んだ。

村民性としての開拓者精神。その姿勢が、エネルギーにも向けられた。

「自分たちの村は、自分たちで守る」

それは自立への意思決定であり、言葉で終わらない実践だ。

村民の生活に深く根付いている温泉。写真は麻釜
配信元: STEEP

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