
約2500年前の墓から、思いがけない遺骨が見つかりました。
それは、まだ幼い子供たちです。
しかし彼らの腰には、成人男性の戦士が身に着けるはずの青銅のベルトが巻かれていました。
この奇妙な埋葬は、イタリア南部の古代墓地で行われた発掘調査によって明らかになりました。
なぜ子供が戦士の象徴を身に着けて埋葬されたのでしょうか。
研究者たちは、この遺物が当時の社会や価値観を理解する手がかりになると考えています。
目次
- 子供の墓から見つかった「戦士のベルト」
- なぜ子供が「戦士の象徴」を持っていたのか
子供の墓から見つかった「戦士のベルト」
この発見は、イタリア南西部カンパニア州の町ポンテカニャーノで行われた考古学調査で報告されました。
調査は、旧タバコ工場跡地での建設工事に先立つ発掘の中で実施され、古代墓地の一部が調べられています。
その結果、紀元前4〜3世紀の34基の墓が確認され、このうち15基は2〜10歳の子供や乳児の埋葬でした。
【発見された遺物の画像はこちらから】
墓は家族単位で並ぶ形で作られており、多くは地面に穴を掘った土坑墓で、その上に瓦を屋根状に置く構造になっていました。
副葬品としては土器が置かれることが多く、宴会用の器や香油容器などが見つかっています。
この墓地は、古代イタリアのサムニウム文化の埋葬習慣をよく示しています。
一般に、
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男性の墓には槍先や投げ槍などの武器
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女性の墓には指輪やブローチなどの装身具
が副葬されていました。
しかし今回の発掘では、5〜10歳の子供2人の墓から、成人男性の墓に特徴的な青銅製ベルトが見つかったのです。
なぜ子供が「戦士の象徴」を持っていたのか
青銅のベルトは、サムニウム社会では戦士を示す象徴的な装備でした。
そのため通常は成人男性の墓にしか見つかりません。
にもかかわらず、幼い子供の墓から同じ装備が出土したことは非常に珍しい例です。
実はポンテカニャーノでは、過去の発掘でも12歳の子供が青銅のベルトを着けて埋葬されていた例が確認されています。
考古学者たちは、このような埋葬の意味について確定した説明を持っていません。
ただし、ヨーロッパでは似た例が知られています。
例えばイギリスの6世紀アングロサクソン墓地では、少年が戦士の装備とともに埋葬されていました。
研究者たちは、これが「その子供が将来どのような地位の男性になることを期待されていたのか」を象徴する可能性を指摘しています。
つまり、実際に戦士だったわけではなく、家族や共同体が託した未来の役割を示していたのかもしれません。
発掘現場となったポンテカニャーノでは、1960年代から発掘が続いており、すでに1万基以上の墓が確認されています。
今回の調査も、都市開発に伴う考古学的調査の一環として行われました。
チームによれば、現在も市内のさまざまな場所で発掘が続いており、研究成果は今後まとめて公表される予定です。
子供の墓に残された青銅のベルトは、単なる装飾品ではありません。
それは、2500年前の人々が次の世代にどのような役割や期待を託していたのかを示す、静かなメッセージなのかもしれません。
参考文献
Children wearing bronze ‘warrior’ belts discovered in 2,500-year-old cemetery in Italy
https://www.livescience.com/archaeology/children-wearing-bronze-warrior-belts-discovered-in-2-500-year-old-cemetery-in-italy
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

