イランに対したアメリカとイスラエルが軍事作戦を始めたことにより、中東情勢が悪化。解決の見通しは立っておらず、F1にも大きな影響が及びそうだ。4月にはバーレーンGPとサウジアラビアGPの開催が予定されていたが、中止されるという発表がこの数日の間にも行なわれる可能性があることが分かった。
今年のバーレーンGPとサウジアラビアGPの開催可否については、開幕戦オーストラリアGPの際にも協議が行なわれた。この時は10日以内に最終決定を下すという期限が設けられるに留まったが、その後も状況が好転する見込みは立たず、今季の開催に関しては中止という決断が下される可能性が高まっている。
バーレーンとサウジアラビアのグランプリは、F1の複雑な物流を最適化するため、セットでの開催計画となっている。そのため、どちらか一方が開催可能だとしても、実現は非常に難しい。それでも現状を考え、なんとかサウジアラビアGPだけでも開催することが目指されていたようだ。
F1チームとピレリの貨物の一部は、プレシーズンテスト後もバーレーンにそのまま残されている。サウジアラビアGPを開催するためには、この荷物をバーレーンから運び出さねばならないが、現状で国境を超えて大量の荷物を輸送する目処は立っていない。またこの荷物を動かすために、バーレーンにスタッフが入国せねばならないが、現時点でバーレーンに渡航するのも簡単ではない。
この期限は今週末の中国GPの直後に迫っていると見られているが、それまでに目処が立つ見込みはほとんどない。
中東情勢は緊迫の度合いを増している。イランは最近、バーレーンにある石油貯蔵施設を攻撃するなど、状況は悪化。さらにホルムズ海峡も事実上閉鎖状況となっており、海上輸送にも大きな打撃が及んでいる。空路に関してはサウジアラビアは概ね通常通りに戻ったが、バーレーン国際空港発着の便は今も全てが運行停止となっている。
■3月14日時点での今後の見通し
バーレーンとサウジアラビアの2グランプリが開催できないことになれば、日本GPとマイアミGPの間に、6週間の空白期間が生じることになる。
当初の報道では、コロナ禍における緊急代替開催のように、ヨーロッパ圏内で2戦を追加開催する可能性があると言われていた。しかし物流面でも商業面でも、代替開催するメリットがほとんどないため、実現の可能性は低い。
2026年シーズンのヨーロッパ圏内での初戦は、6月7日に決勝レースが開催予定のモナコGPである。代替開催としてポルティマオやイモラといったサーキットでのグランプリを実現させるには、日本GP後の予定を7〜8週間早めてヨーロッパに物資を運ばねばならない。これはF1やFIA、そして各チームやプロモーターにとって大きな負担となるだろう。
また各プロモーターは、F1を開催するための組織を構築する必要があるが、この短期間ではそれも現実的ではない。
チケット販売の問題もある。短期間でチケット販売を準備し、そのためのマーケティング活動を行なうのは極めて困難だ。実現できたとしても有料入場者数は限られるはずであり、それだけの手間や開催権料を支払うだけのメリットを享受できる可能性は低い。
鈴鹿で2週連続開催するのではという報道もあった。これも同じ理由で実現させるのは簡単ではない。
まず、チームスタッフが延泊するホテルを今から確保できる保証はない。鈴鹿周辺の宿泊施設の数は限られており、通常は1年前からF1のために予約されている。ただその1週間後となれば、既に一般客の予約も多数入っているはずであり、改めて宿泊施設を確保するのが至難の業であることは、想像に難しくないだろう。
また観客の受け入れに関しても、たとえチケット販売は可能だったとしても、交通インフラの面で難しいと言わざるを得ないだろう。F1開催の際には、各鉄道会社・バス会社が大増発して対応しており、これも今から構築するのは大変だ。そもそも日本GPの1週間後には、鈴鹿サーキットと同じホンダモビリティランドが運営するモビリティリゾートもてぎでスーパーフォーミュラの開幕戦が予定されており、サーキットのスタッフの手数が足りないはずだ。
もちろん、代替開催の可能性が完全にゼロとは言い切れないが、それでも非常に難しい状況であることは間違いない。
F1の運営側が、バーレーンやサウジアラビアの主催者とどんな取り決めをしたのかは不明である。この2戦の開催権料は合計で1億ユーロ(約180億円)をはるかに超えると言われており、F1にとってこの2戦を失うのは必然的に財政的にも大打撃となる。各チームの収益にも影響を及ぼすだろう。マクラーレン・レーシングのザク・ブラウンCEOはオーストラリアGPの際、「現在の状況を考えると、多少の財政的な影響があっても仕方がない」と語った。
この損失を避けるために、代替開催が目指される可能性は低い。しかしながら、2026年のレース開催数が、何らかの状況によって22戦を下回るようなことになれば、状況は変わるかもしれない。
F1のテレビ放映権の契約は、最低22戦を開催する必要があると定められていると言われる。今回2戦が開催できないとなっても、この22戦を下回るようなことはないが、例えば2023年のエミリア・ロマーニャGPのように天災によって開催できないレースが生じてしまった場合には22戦を下回るため、是が非でも代替開催を行なわねばならななくなるはずだ。
また年末には、カタールとアブダビの中東での2戦が予定されている。それまでに中東情勢が解決していなかった場合には、F1は頭を悩ませることになるだろう。
現代F1を代表するドライバーとも言えるルイス・ハミルトン(フェラーリ)は中国GPの木曜日に、F1のステファノ・ドメニカリCEOが「我々全員にとって正しいことをしてくれる」と信じていると語った。
中東情勢の先行きは不透明。F1はこれに応じて、今後も何らかの対応を迫られることになるだろう。

