
また、『ウィキッド 永遠の約束』では元ネタである童話「オズの魔法使い」の物語も深く絡んでくる。南の善い魔女=グリンダ、西の悪い魔女=エルファバとして描かれているのはご存じの通り。さらに、これ以外のキャラクターも「オズの魔法使い」の設定にどんどんリンクしていく。ここでは、そんな重要キャラクターとのリンクを解説しながら、両作の関わりを整理していきたい。

■知恵が欲しいカカシになってしまう王子フィエロ
まずはグリンダやエルファバと共に魔法大学で学んでいた王子フィエロ(ジョナサン・ベイリー)。エルファバに心惹かれながらも、グリンダとの結婚を余儀なくされていく、恋愛と葛藤の物語のキーパーソンでもある。

最初はチャラいハンサム青年と思われたが、エルファバの芯の強さに刺激を受け、人間的に成長していく彼は、本作では“悪い魔女”に仕立てられたエルファバ討伐のための親衛隊長に任命されることに。苦悩の末に彼女を助けようと決断するも、裏切者として拷問されるのだから報われない。エルファバも彼を助けようと魔法を駆使するが、これによってフィエロはカカシに姿を変えられてしまう。そう、「オズの魔法使い」で知恵を欲していた、あのカカシだ。

■“東の悪い魔女”となるエルファバの妹ネッサローズ
エルファバの妹で、脚の不自由な魔法大学生ネッサローズ(マリッサ・ボーディ)の運命は、さらに悲劇的だ。本作での彼女はマンチキン国の総督の座に就いている。

前作で恋人のような存在かと思われたボック(イーサン・スレイター)は側近となっていたが、彼がいまもグリンダに思いを寄せていることを知らされ、失意のどん底に。さらに姉との葛藤も手伝い、嘆きのなかで“東の悪い魔女”であることを自覚することになる。「オズの魔法使い」では、序盤で竜巻によって家ごと飛ばされた主人公ドロシーの、その家に潰されて命を絶たれる、あの悪い魔女と同一キャラクターである。

■心を持たないブリキ男となるボック
ボックの運命もまた、永遠に変えられることになってしまう。グリンダに思いを伝えようとした彼はネッサローズに“心”を奪う魔法をかけられる。

グリンダは彼を苦しみから解放してやろうと魔法を駆使するが、それによって心を持たないブリキのきこりに姿を変えられることに。こちらも「オズの魔法使い」ではカカシと同じくドロシーの冒険に同行。心を欲しがり、共にオズの魔法使いの元へと向かおうとするブリキ男だ。

■“カンザスから来た少女”ドロシー
本作では肝心のドロシーも初登場。要所要所でその姿を見せるが、顔は決して見えないという絶妙な演出が施されている。「オズの魔法使い」のクライマックスにして、本作のクライマックスでもあるエルファバ、すなわち“悪い魔女”と対峙するシーンは、最もわかりやすいリンクと言えるだろう。基本的にドロシーは原典のままの無垢な少女で、カンザスの我が家に戻るために愛犬トトを連れて冒険を繰り広げている。「ウィキッド」の世界で展開している“大人”の事情など知る由もないのだ。

このようにキャラクターを振り返ると、『ウィキッド 永遠の約束』は『~ ふたりの魔女』のような明るさが強調された世界ではないことがよくわかる。前作では学生だった主要キャラクターたちも、ここでは立派な大人。自分の心に正直に生きようとする者もいれば、人のためによかれと思ったことをしようとする者もいる。

しかし、そんな善意が必ずしも善行とイコールにならないのが大人の世界。「オズの魔法使い」におけるドロシーの無垢とは対照的だ。そんな構図を浮かび上がらせながら、大人の観客に響くものを投げかける。その重みを、二度三度と味わってみてほしい。
文/相馬学
