クライマックスの「絶望感」の不足
そして、今回のリメイクで最も残念だったのは「恐怖感」はまだしも「絶望感」があまりに不足していることだ。
特に旧アニメ版でのクライマックスにおいて、ひみつ道具のエネルギーが切れ、みんなが敵に捕らえられ、ドラえもんだけがボロボロになりながらポセイドンとしずかの元にたどり着くという場面では、しずかの涙と言葉もあいまって、本当に「もうこれで世界が終わってしまう」という恐ろしさがあった。
だが、今回はその場所にのび太もついていけているうえに、あろうことか「のび太の無事をわざわざ見せる」ため、「なんか大丈夫そうだな」とさえ感じさせてしまう。
旧アニメ版であれほど涙を誘ったバギーの決死の行動も、今回の演出では「そこまでの犠牲を払う必要があったのだろうか」と感じられてしまい、クライマックスの感情的な高まりが弱まっている。しかも、旧アニメ版でも「あまり優秀じゃない」と言及されていたポセイドンは、本作ではさらに弱いボスという印象が強まり、加えて前述の改変された言動も相まって、結果として格を落としてしまっている。
それらは子どもを過度に怖がらせないための配慮なのかもしれないが、前年の評価の高いオリジナル作品『のび太の絵世界物語』のクライマックスでは、まさに絶望そのものといえる描写と展開を用意していたではないか。そこは『海底鬼岩城』という作品では、絶対に外してはいけなかった。
結論としては、「作品単体で見れば悪くはないが、オリジナルの魅力を場面場面で少しずつ、しかし全体では決定的に損ねてしまった、残念なリメイク」と評価せざるを得ない。また、リメイクそのものに「忠実にしすぎるとただの焼き直しになってしまう」「大胆なアレンジをするとファンから解釈違いと言われてしまう」という難しさがあることも、あらためて痛感した。
それでも、過去のリメイク作『新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』『新・のび太の日本誕生』『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』はオリジナル版の重要な要素を外さず、かつアレンジが新たな魅力として昇華されていた。せっかく名作を現代によみがえらせるのだから、それらと同等、もしくはそれ以上のクオリティーのリメイクを期待しても良いと思うのだ。
次回作はオリジナルになるようだが、今後もドラえもん映画の進化を期待したい。
(文:ヒナタカ)

