開幕戦のオーストラリアGPは、新レギュレーションと新しいF1マシンにとって初の本格的なテストとなった。そして予想通り、多くの議論を呼ぶことになった。
中でも大きな注目を集めたのがスタートの問題だ。これはプレシーズンテストの段階から指摘されていたが、オーストラリアGPではスロースタートや接触寸前となる場面が見られ、再び焦点が当てられることになった。
各チームは開幕戦のデータを見直し、中国GPに臨んだはずだが、中国GPのスプリントでもアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)やマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がスタートに失敗している。
今年はMGU-Hの廃止により、ターボを適切な回転数まで引き上げるためにエンジンの負担が増え、時間もかかるようになった。そのため安全上の理由から、グリッド上でスタート前に5秒の準備時間が認められることになった。
メルセデスを含む複数のチームはスタート手順のさらなる変更を求めているが、これ以上の修正には反対するチームもあり、現状では意見が分かれている。
ターボが大きいチームほどスタート準備に時間がかかることは、パドックではよく知られている。しかし問題はそれだけではない。オーストラリアでは多くのチームが、グリッド位置に関係なくバッテリー残量がほぼゼロの状態でスタートを迎えることになった。これが差をさらに拡大させた。時速50kmを超えると使えるはずのMGU-Kによるブーストが、バッテリー切れにより使えなかったからだ。
こうした状況から、スタート手順の見直しを求める声が出ているのは当然とも言える。
一方ですでに譲歩が行なわれた以上、これ以上の規則変更に反対するチームもある。なぜなら、それは自分たちの競争上の優位性を手放すことになるからだ。
その筆頭がフェラーリで、彼らはターボを小型にし、スタート時の優位性を得ようとしていたのだ。実はフェラーリはこの問題を1年前から指摘していたが、そのときはほとんど注目されなかった。
こうした立場のチームは、問題はレギュレーションではなく、各メーカーの内部プロセスにあると考えている。
オーストラリアGPで明らかになった問題の一つは、多くのドライバーがほぼ空のバッテリーでスタートに臨んでいたことだ。
これにはFIAが各ラップに設定しているエネルギー回生制限も影響している。さらにフォーメーションラップではタイヤやブレーキを温めるために激しい加速と減速を行なう必要があり、その結果、スタート前にバッテリーを使い切ってしまうチームが多かった。
フェルスタッペンによれば、スタート手順を簡素化しスロースタートや事故のリスクを減らすための提案はいくつも出ているという。
しかしFIAは現時点で介入できない。シーズン中のレギュレーション変更には大半のチームの賛成(スーパーマジョリティ)が必要だが、フェラーリが反対している以上合意を得るのは難しく、安全措置として扱いを変更する以外に方法はない。
中国GPを前にメルセデスのジョージ・ラッセルはこう語っていた。
「FIAはやろうとしていると思う。ただしスーパーマジョリティが必要で、現時点ではそれがない。だから、どのチームが反対しているかは想像できるだろう」
つまり現状ではフェラーリが変更に反対していると示唆した形だ。
フェルスタッペンは、「解決策はシンプルだ」と中国GPを前に語った。
「ただしバッテリー関連はすべてFIAの承認が必要だ。バッテリー0%でスタートするのは楽しくないし、危険でもある」
「スタートで大きな事故が起きかけたのは一部はバッテリー問題、そして一部はアンチストールの影響だ。でも大きな速度差があった。エネルギーがゼロだったのは僕だけじゃない」
フェラーリの優位性はバッテリーの使い方そのものにあるわけではない。しかしターボを含めたエンジンの性能が劣るチームほど、モーターの助けが必要になることは明らかだ。
ラッセルはこの状況をよく理解しており、規則変更に反対するチームについて「利己的だ」と表現した。
「メルボルンではグリッドの半分がスタートをうまくできなかった。でも僕たちは適応するし、何に注意すべきかも分かった。FIAはこのエネルギー回生制限をなくしてドライバーを助けようとしていた。でもいつものように、自分たちに都合のいいことだけを考える人もいる。それがF1だ」

