「止めたろか?」と言われたらなんて返事する? コミュニケーションにも着目
ご本では、土木工学、歴史的な視点の見解とともに、このジョークが放たれる会話についても着目されているのが特徴的です。滋賀県民としてのアイデンティティーが前提にある上で、「琵琶湖の水止めたろか?」と発せられたら、受け止める側はどのような返答をするのが妥当なのでしょうか。
それを検討するため、ご本では5つのパターンを示しています。答えは「止められても困らへんよ」でしょうか? それとも「沈むのは滋賀やけどな」? もしかしたら「あなたにその権限はない」? ……本当のところ、会話ではもちろんどんな返しをしても自由ですよね。ですが、ご本では返答が現実と照らし合わせて可能かどうかといった点と一緒に、その会話がコミュニケーションとして機能しているかを大切にされているのがうかがえます。
ジョークとして発せられた言葉は、場を和ませ、人と人との関係を円滑にしてこそ……そんな優しいまなざしから、ベストな返答の仕方が模索されていきます。
「水止めたろか」から水と人との暮らしが見える
会話をするときにも、それは本当にあり得るのか、という点がベースになっているように、ご本の後半ではいよいよ琵琶湖の水を止めることはできるのか? の実現の可能性について書かれます。水の流れるトンネルや浄水場の検証から、作者さんが現地に足を運んで考えを深めていった様子が分かります。
そして、水が本当に止まったら? と、「琵琶湖の水止めたろか?」の先にまで思いをめぐらされており、最後の項目は防災について言及しています。みんなが面白おかしく受け止める言葉には、人が安全に暮らしていくための視点が詰まっている―― そんな奥深さを感じさせてくれる一冊でした。

