2026年のスーパーGT・GT300クラスに、EG33型エンジンに換装したBRZを投入するスバル/STI。ドライバーを務める山内英輝と井口卓人に、先代EJ20エンジン搭載車両とのフィーリングの違いなどについて聞いた。
スバルは2021年にGT300のシリーズチャンピオンに輝くも、近年はエンジントラブルで好結果を逃すシーンが多く、ハイパワー化が進むGT300において水平対向4気筒の名機EJ20エンジンが限界に来ていることは自他共に認める状況となっていた。
そんな中でスバルは水面下で新エンジンを開発を進め、2026年シーズンからはEG33をベースとした水平対向6気筒ツインターボエンジンを投入することになった。ベースの型式こそ古いが、4気筒から6気筒になったことは1気筒あたりの負荷を減らすことに繋がり、耐久性の面で大きな前進が期待されている。
ではドライバーは新しいエンジンを積んだBRZでどのようなフィーリングを得ているのだろうか? 岡山での公式テストを終えた山内と井口に話を聞くと、総じて「楽になった」という感覚があるようだ。
「トータルで言えば、楽になったなという感じですね」と明かすのは井口。「EJの時は下(低回転でのトルク)がなく、アクセルの“付き”(レスポンス)の部分ですごく難しいところがありました。そのため走行中はなるべく回転を落とさないように、結構特殊な走らせ方をしていました」とのことだが、新エンジンは十分なトルクがあり、シビアな調整が必要ないのだという。上記の理由でこれまでは決勝のラップタイムにばらつきが出てしまっていたが、そこも安定していきそうだ。
これについては山内も、「これまではターボ回転を下げないようにうまくやることを意識していましたが、今はアンチラグを使わずにエンジンの出力だけで走らせることができています。素の状態でパフォーマンスを出していけるとこんなに違うんだな、と思うくらい、楽さを感じています」と語る。アンチラグシステムに頼る必要がなくなれば、燃費の向上も期待できるはずだ。
そうなると、決勝レースでの戦い方にも柔軟性が出てくる。近年のBRZは予選での速さが目立っており、2021年と2022年には4回ずつポールポジションを獲得した“予選番長”でもあったが、山内曰く、ストレートスピードや燃費、前述のような低回転トルクといったネガティブな面を補うためには、逃げのレースをする必要があったのだという。
単純にパワーが足りないと、集団の中でオーバーテイクをして追い上げていくのが難しい。また燃費に難があると、給油時間を短くしてピットストップで相手を出し抜くのもまた難しい。さらにライバルと競り合っていると、GT500に道を譲る際に回転数が落ち、再加速に苦しんでいる隙を狙われてしまう……制約は少なくなかった。
山内は、今後力は強いレースを見せられるはずだと期待を寄せる。
「本当にそうなるのかという不安はありますが、走ってみてのトルク感が全然違うので、そこは強みになると思います。戦い方は変えていけるんじゃないかと思います」
井口も次のように語る。
「今まではトップでピットに入っても、ギャップが十分でないとピット作業で逆転されてしまうというケースが結構ありました。今後はそうなったとしても挽回できるようなトルクがこのエンジンにはあると感じています」
■トラブル続きの昨年は「EJを勝たせたいという一心だった」
そしてドライバーにとっては、安心してアクセルを踏めるという点も大きいだろう。これまではエンジントラブルが度々発生する中、ドライバーは異音が出ないか気を揉みながら「信じて踏むしかない」というコメントが聞かれるほどだったが、今はそうではない。
「EJの頃はとにかく高回転まで回して、パワーを振り絞っている感じがありました。今は乗っていても低い回転で走っていることがエンジン音を聴いても分かるので、余裕があるなと」
そう語る井口。昨年の富士戦、優勝目前のファイナルラップでエンジンがブローして悔しさを爆発させた際も、水面下で次期エンジン開発が進んでいたことは当然知っていたわけだ。ただそれでも、彼の気持ちは新エンジンに移ってはいなかった。ラストイヤーのEJ20に3年ぶりの勝利を……その一心だったという。
「EJを勝たせたいという思いだけが強くありました」
「僕たちはエンジンを作っているところに出向いたりしていて、今回のエンジンの火入れ式にも立ち合わせていただきました。だからエンジンを作っている人たちの顔を見ていますし、彼らのEJに対する思いや努力を知っているので、なんとかEJに有終の美を飾らせてあげたいという一心でアクセルを踏んでいましたね」
先日の岡山テストでも、軽微なトラブルを除けば極めて順調に走行を重ねることができていたBRZ。非常に順調なテストであったと山内も満足感を口にしている。生まれ変わったBRZは、これまでとは違った形で存在感を見せてくるかもしれない。

