
混戦の中で先制ヘッド弾「ずっと狙っていた」。なでしこ田中美南は序盤から全力プレー。89分に突然倒れて途中交代も「大丈夫ですよ」【女子アジア杯】
なでしこジャパン(日本女子代表)が女子アジアカップの準々決勝・フィリピン女子代表戦を7-0で制し、準決勝進出と来年の女子ワールドカップ出場を決めた。
5日前のベトナム女子代表戦から8人の先発を変更した日本は、両サイドや中央から攻め込み、序盤から次々とシュートを放つ。
しかし、オーストラリア女子代表との開幕戦で0-1と敗れるも、好守を見せたフィリピンは、日本戦でも人数をかけてゴールを死守する。
30分頃、相手GKがピッチ上で座り込み、数分の中断時間ができると、ピッチ上の日本の選手は互いに自然と引き寄せられるように集まって話し合った。
CFで先発出場した田中美南が「これまで通り、フィリピンの3センターバックの脇を引き出していくことと、ミドルシュートも引き続き打っていくよう話した」と明かしたように、攻め方を変えないことを確認し、その後も日本は絶え間なくシュートを放っていった。
会場のシドニーは残暑が厳しく、現地時間16時の日差しが強いなかでキックオフを迎えたが、田中は前半から全力で惜しみなく相手を追い込むために走り、ゴール前を固めるフィリピンの隙を常に窺い、ハンターのようにゴールを狙い続けた。
そして、待望の先制点が決まったのは、前半終了間際の45分。林穂之香の左CKからゴール前で混戦となり、古賀塔子、清家貴子がシュートを放つ。しかし、いずれもブロックされ、今度は藤野あおばがシュート。相手GKが弾いたボールがクロスバーに当たると、そこに田中が飛び込みヘディングで押し込んだ。
その後、スタジアムにはVARでチェックする静かな時間が流れたが、無事に得点が認められた。
「守りを固めてくるチームが相手なので、ああいう混戦の中からの得点はずっと狙っていた」と田中は話し、「自分のヘディングシュートでちゃんとゴールラインを割ったのが見えていたので、VARの時間もあんまり心配していなかった」と、代表通算101試合目での47点目を振り返った。
田中はその後も最前線で運動量を落とさず、76分の古賀のゴールもアシスト。過密日程の大会で全試合に出場し、さらに76分という終盤になっても相手と競り合いながらジャンピングヘッドで正確に味方にパスができる技術こそ、日本のエースストライカーたる所以だ。
「(清水)梨紗からクロスボールが来ると思ったんで、良い準備からのヘッドで塔子に折り返しのパスができた」と、平然と話した。
ここまでの3試合で無得点だった田中だが「焦りみたいなものは全然ない」と落ち着き払った様子。89分にはピッチ上で突然倒れ込み、そのまま途中交代となったが「いやまぁ、心配してもらわなくて大丈夫ですよ」と気さくに笑う姿を見ると、準決勝以降も田中はピッチに立つはずだ。
「女子ワールドカップ出場は、通過点で最低限のところ。みんなも分かってる通り、ここからもう一段階レベルが上がるので、気を抜かずしっかり引き締めていきたい」と、ゆっくりミックスゾーンを去っていく田中の後ろ姿は、誰よりも頼もしかった。
取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)
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