夜の和田小屋とそこで生まれる化学変化

和田小屋の夜が始まった。一日滑り終えた充実感が、参加者たちの表情に浮かんでいる。
着替えを済ませ、リラックスした空気が流れるなか、会話が自然と始まっていく。一日、同じプログラムを共にした者同士はもちろん、別々のセッションにいたメンバーも「滑り手」という共通のプロフィールがあるから、会話は簡単に生まれる。


日が暮れて、KEISONのミニライブがスタートした。ライブハウスのような派手なパフォーマンスではなく、和田小屋という空間に合わせた、温かみのある演奏。参加者たちの心を解きほぐしていく。
筆者は、本メディアの社長やかぐらスキー場の元支配人の皆さまが集まるテーブルに加わった。レジェンド達の豪快な経験談を聞く。こんな話が聞けるのもこの空間ならではだ。次にご一緒したテーブルには、40代後半でスノーボードを始めた方、夫婦で新潟を滑りまくっているご夫婦、病気を克服されて滑り手として復帰された方など、様々な背景を持った方々が集まっていた。
それぞれのテーブルで、対話が深まっていく。夜が深まるにつれ、場も熱を帯びてくる。日中は別々のセッションにいた滑り手たちが、ジャンルも年齢も超えて、過去の経験や考え方を共有していく。技術論、道具論から、それぞれの人生観や価値観まで。「なぜ雪山に惹かれるのか」「滑ることで何を得ているのか」。深夜になっても、対話は尽きることがなかった。
SNSが全盛でなんでも共有されているように思えるが、こういう場所でしか共有できないこともある。顔を合わせながらのコミュニケーションの大事さを改めて感じさせる空間だ。

「和田小屋という特別な空間だからこそ、本音で語り合える」という参加者の声が印象的だった。70名を超える参加者が一つの空間を共有する濃密さ。下山することなく、一晩中同じ場所にいる。その環境が、普段は語られない深い話を引き出していく。
次の日には、「次はあなたの地元でも滑ろう!」という約束が交わされる。1泊2日という短い時間が、確かに何かを変えた。
プロショップが育む未来のスノーカルチャー

この「和田小屋フェス」には、bottomline田畑氏の持つ「遊び場を用意する」という思想が反映されている。単なるファンイベントではなく、雪山で人がつながっていく文化を根付かせ、長期的な視点で日本のスノーシーンを豊かにしていこうとする試みなのだ。
細部へのこだわりも、このイベントの質を支えている。和田小屋という場所の選定。影響力のあるゲストの招聘。「異ジャンル混合」という企画。「とにかく楽しく呑んで語らおう」というフランクな飲み会。フォトグラファー宇家譲二氏によるドキュメンタリー記録。これらすべてが参加者に新鮮な刺激を与え、化学反応を生み出す仕掛けなのだ。
参加者からは、「こんな場が各地にあったら、スノーカルチャー全体がもっと豊かになる」という声が聞こえた。bottomlineの取り組みは、全国のプロショップへの提案でもある。ギアの販売という「点」から、コミュニティ育成という「面」に広げていく取り組み。地域ごと・ショップごとに異なるスタイルで、雪山を愛する人たちが集まれる場を作っていく。それがひいてはスノー界を盛り上げていく力強い土台となるのではないか。
あなたの街にもプロショップや専門店があるはずだ。シーズン終わりにチューンナップにスキーを出すだけではもったいない。店主と語り合い、ショップ主催のイベントに参加し、仲間を見つける。プロショップを上手に利用することで、スノーライフはきっともっと豊かになる。
この先、ジャンルレスなスノーカルチャーの未来の一端を、自分も担っていくのはどうだろう。
Photo:Joji Uya
Special Thanks:bottomline
