
『帰ってきたウルトラマン』MUSIC COLLECTION(日本コロムビア)
【画像】「うーん」「今も考えさせられる」これが「帰マン」で差別や迫害の果てに暴れて倒された怪獣です
ウルトラマンだけじゃない、当時のTVドラマにおける屈指の名言?
ウルトラシリーズ作品には、多くの名言が登場します。正義とは何かを問い続けている本シリーズにおいては、さりげないセリフが少年少女のみならず、大人たちの胸にもグサリと刺さりました。
例えば、『ウルトラセブン』の、第8話「狙われた町」における終劇ナレーションは有名です。
直接手を下さず、人間同士の信頼関係を破壊しようとした「メトロン星人」の敗北が描かれた後、「我々人類はいま、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから……」と、極めてニヒルなナレーションが流れます。
また同じく『セブン』第26話「超兵器R1号」では、侵略的宇宙人に対抗すべく、より強力な破壊兵器を開発し続けるべきだ、という論調に対し、モロボシ・ダンは「それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ」と、これまた少年よりも大人の心にのしかかるセリフをつぶやくのでした。
こうした昭和ウルトラシリーズの名言のなかでも、とりわけ人びとの心に極大のインパクトを残したのが、『帰ってきたウルトラマン』の、とあるエピソードで発せられた次のセリフです。
「だって、うちパン屋だもん」
先に挙げた名言と比べると、極めて日常的なセリフですが、これはウルトラシリーズのみならず、同時代のドラマ番組のなかでも屈指の名言として語り継がれているというのです。
どういうことでしょうか? このセリフが登場するエピソードは、『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」(脚本:上原正三 監督:東條昭平)です。同話は、『帰ってきたウルトラマン』の最高傑作であり、同時に最大の問題作とも評される異色のエピソードです。
身寄りのない少年は、地球の調査でやってきた「メイツ星人」と、廃墟で貧しい共同生活を送っていました。メイツ星人は地球の大気汚染で体を蝕まれており、少年が日々の生活を助けてあげなくてはなりませんでした。しかし街の人たちは、少年が怪しげな超能力を使うなどと疑いをかけ迫害します。
「少年」に優しく接したお姉さんは何者なのか?
ある日のこと、少年は商店街のパン屋さんに出向きます。ところが、そこでも女将さんに追い返されてしまうのです。それを見ていたパン屋の娘さんは、立ち去る少年の後を、パンを持って追いけます。しかし、少年は無表情のまま、「同情なんてしてもらいたくないな」と突き返すのです。
そんな少年に対し、お姉さんが言ったのが「同情なんかしてないわ。売ってあげるだけよ。だって、うちパン屋だもん」というセリフでした。
少年は代金を支払うと、嬉しそうに「ありがとう」と述べ、走って去っていきます。あくまでも対等な関係で接してくれたことが、少年にとっては何よりも嬉しかったのでしょう。この時のお姉さんの笑顔、そして少年のボロボロの黒い傘は、強烈な余韻を残します。
その後、この少年とメイツ星人に訪れる展開は、ぜひとも本編を観てほしいと思います。この「怪獣使いと少年」の放送後、監督の東條昭平さんは、ウルトラシリーズから別番組『ミラーマン』へと配置換えになりました。そのくらい、当時は問題作扱いだったのです。
さて、もう一点気になるのが、パン屋の娘を演じた女優さんです。これほど強烈な印象を残したにも関わらず、残念ながらノンクレジットでした。現在もなお、確固たる情報が判明していない状況です。
実はこのパン屋さんのシーンは、TBS側の判断で、リテイクを命じられた製作陣が急きょ追加撮影し、挿入した場面でもあります。突貫スケジュールであったことは想像に難くありません。恐らくは、この女優さんも劇団などから突然、派遣されてきた人だったのでしょう。今もお元気でいらっしゃれば良いのですが……。
