【スージー鈴木の週刊歌謡実話第27回】
岩崎良美『タッチ』
作詞:康珍化
作曲:芹澤廣明
編曲:芹澤廣明
1985年3月21日発売
ネトフリが狙う「タッチ&メークドラマ世代」
この号が出る頃は、多分WBCで盛り上がっているはず、日本が勝ち残っているはず…。
日本が盛り上がっているということは、みんながNetflix(ネトフリ)の中継を見ているということになります。地上波ではなくネトフリで盛り上がっているって、どんな感じなのだろう。この原稿、開催前に書いているので想像できないのです…。
WBCに絡めたネトフリのキャンペーンで驚いたのは、まずは「大会応援ソング」として、B’zの稲葉浩志に岩崎良美の『タッチ』(1985年)をカバーさせたこと。
あと、WBC中継の宣伝に使ったコピー「MAKE DRAMA」(メークドラマ)にも結構驚きました。’96年にリーグ優勝した巨人・長嶋茂雄監督が掲げ、流行語となったスローガン。
これら『タッチ』と「メークドラマ」から垣間見えるのは、配信をよく知らない「タッチ&メークドラマ世代」のオヤジ層を何とか取り込んでやるぞというネトフリの戦略です。
だとしたら同じく「タッチ&メークドラマ世代」ど真ん中の私も、ここで『タッチ』を語ることで少しだけ協力しましょうか。
’85年から’87年までフジテレビ系で放送された人気アニメ『タッチ』の主題歌。ご存じのように高校野球が舞台になっていたので、WBC中継の宣伝に選ばれたのでしょう。
岩崎良美は松田聖子と同じ’80年デビュー。デビュー当初は姉が岩崎宏美というインパクトもあり、良美の方が聖子よりも勢いがあったのですが、こちらもご存じのように、いつの間にか聖子の方が一気に飛び出します。
その後の岩崎良美は、松田聖子との差別化という意味もあったのでしょう。持ち前の歌唱力を活かして、大人っぽく洗練されたムードの歌で勝負するも、売り上げの面では聖子との差は広がるばかり。
という流れの中で、このロックンロール調の『タッチ』だったのです。
【スージー鈴木の週刊歌謡実話】アーカイブ
“女チェッカーズ”としての音楽性
作詞家・作曲家の名前を見て、なるほどと思った人は音楽通。康珍化(「かんちんふぁ」と読みます)と芹澤廣明といえば、そう、チェッカーズの『ギザギザハートの子守唄』(’83年)、『神様ヘルプ!』(’85年)などを大ヒットさせた、当時ノリノリの作家陣だったのです。
そういえば、これら2曲と『タッチ』、曲調がどことなく似ているでしょう? 余談ですが、チェッカーズと岩崎良美、レコード会社も同じキャニオンでした。
もちろんアニメの人気があってこそですが、加えて、いわば「女チェッカーズ」としての音楽性も加勢して、この『タッチ』が岩崎良美オールキャリア最大のヒットとなったのでした。
それにしてもWBC、気になります。直感的に、侍ジャパンは足を絡められたら弱い気がします。
しょうがない。盗塁を仕掛けられたら、源田壮亮や牧秀悟ら内野陣に歌いましょうかね――「♪タッチタッチ そこにタッチ」
「週刊実話」3月26日号より
スージー鈴木/音楽評論家
1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。
